批評とは、著者が隠していることを読み取る技術だ・・・【情熱の本箱(386)】
【ほんばこや 2021年11月19日号】
情熱の本箱(386)
『批評の教室――チョウのように読み、ハチのように書く』(北村紗衣著、ちくま新書)は、批評のノウハウが学べるだけでなく、時折、著者の本音が垣間見えるので、読み物としても楽しめる。
著者は、批評を「作品の中から一見したところではよくわからないかもしれない隠れた意味を引き出すこと(解釈)と、その作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断すること(価値づけ)」と定義している。そして、「批評に触れた人が、読む前よりも対象とする作品や作者についてもっと興味深いと思ってくれればそれは良い批評だ」と考えている。
批評は、3つのステップで成り立っているという。
第1段階は、「精読」だ。
●作品内の事実を認定しよう
●作品が言っていることを読み取ろう
●みんなウソをついているので、誰も信じないようにしよう
●ウソを見抜けるようになろう
――と呼びかけている。
第2段階は、「分析」だ。
●(ニュートンのように)巨人の肩の上に立とう
●タイムラインに起こしてみよう
●人物相関図に起こしてみよう
●物語を要素に分解しよう
●モチーフ早見表を作ろう
●うまく書かれているか、ヘタに書かれているか、価値づけしよう
●作品の「友達」(=作品同士の関連)を見つけよう
――と提案している。
第3段階は、「アウトプット」である。
●書き始めよう
●一箇所から切り込もう
●タイトルは自分を縛るためにつけよう
●切り口を提示し、分析しよう
●書けない時は照明(=ものすごく細かい箇所)を褒めよう
●自由にのびのび書くな
●ルールすべてを無視しろ
●人に好かれたいと思うのはやめよう
――とアドヴァイスしている。