榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

野心と強運の不思議な関係・・・【続・リーダーのための読書論(27)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2013年5月27日号】 続・リーダーのための読書論(27)

野心が足りない

野心のすすめ』(林真理子著、講談社現代新書)は、「野心」なんて持ったことがないという「控えめな人」に、ぜひとも薦めたい一冊である。何事にも野心満々の著者が提唱する「野心」とは、もっと価値ある人間になりたいと願う、非常に健全で真っ当な心のことだと胸を張る。「自分の身の程を知ることも大切ですが、ちょっとでもいいから、身の程よりも上を目指してみる。そうして初めて選択肢が増え、人生が上に広がっていくんです」。

「私にはかつて、40社以上の会社から就職試験ですべて落とされ、アルバイトで食いつないだ貧乏時代がありました。お金はないし、男もいない、定職に就ける見込みも何もなかったけれど、常に自分の将来を見据えながら、自分を信じて挑戦を続けてきました」。このあけすけな物言いが、著者の持ち味だ。自慢話も然りである。

野心の持ち方

欲のない人が、野心を持つにはどうすればよいか。「自分に与えられた時間はこれだけしかない」と考えよ、と明快である。「人の一生には、ほんの短い時間しか与えられていません。どのように生きていくかということを真剣に考えるのは、充実した人生を送るために不可欠なことだと思います」。

●健全な野心を持つための第一歩は「現状認識」、●「屈辱感」こそ野心の入り口、●人生には、ここが「頑張り時」だという時がある、●何か気に入らない状況があったら、それをすっかり取り払うために、具体的なアクションを起こしてみる「新規まき直し」、●人に否定されたら、悔しい気持ちをパワーに変えてしまう「打たれ強さ」、●野心の親戚である「自己顕示欲の量」を多くする、●野心のバネになる「妄想力」を鍛える、●落ち込むようなことがあったら、とにかく「寝てしまう」――といった体験に裏付けられたアドヴァイスがてんこ盛りである。

「シビアに将来の自分の姿を見据えながらも、同時に自分を信じて、幸福な自分の未来を想像してほしい。すると、そのためには何かをしなければならないという気持ちが、自然に湧き上がってくるのです」、「自分でちゃんと努力をして、野心と努力が上手く回ってくると、運という大きな輪がガラガラと回り始めるのです。一度、野心と努力のコツをつかむと、生き方も人生もガラッと変わってくる」――と、熱いエールを送っている。