榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大学病院の外科医がビジネス書を読んで考えたこと・・・【続・リーダーのための読書論(37)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2014眼m2月20日号】 続・リーダーのための読書論(37)

ドクター・MR向け

もし大学病院の外科医がビジネス書を読んだら――仕事や人生が楽しくなる「深いい話』(海道利実著、中外医学社)は、外科医を初めとするドクターだけでなく、ドクターのパートナーを目指すMRにとっても読み応えのある一冊だ。

その理由は、3つある。①マーケティングのエッセンスを学ぶことができる、②患者志向で頑張っているドクターの考え方と行動を知ることができる、③大学・基幹病院のドクターにとって重要な意味を持つ学会発表・論文作成の段取りを頭に入れることができる――からである。

著者の心中では、「医学部に入学し、医師国家試験に合格すれば、医師免許を取得し、医師になれる。医師になると、患者さんからは『先生、先生!』と言われ、医薬情報担当者(MRさん)からは丁寧な挨拶を受け、あたかも自分は偉い!と錯覚する医師がいる。しかし、医師1年目は、社会人1年目である。これを理解していない新人医師が非常に多い。いや、新人医師に限ったことではないかもしれない。・・・一歩、病院を離れ、社会の中で見れば、新人医師はペーペーの新参者である」という思いが脈打っている。

学会発表・論文作成

学会発表と論文作成について、「学会発表のテーマの選び方(①縦につながるテーマを持て→②自分で汗をかいて徹底的にやれ→③演題募集からテーマを選べ)→学会発表と論文作成は『1対1対応』→抄録を書いたら、すぐに論文化」することを勧めている。「私は、学会発表やその後に続く論文作成の一連の流れの中で、最も重要な作業が抄録作成だと考えている。誠実は人間は、臨床でも研究でも誠実、不誠実な人間は臨床でも研究でも不誠実なのである。同様に、抄録作成が誠実な人間は、発表も論文も誠実、抄録作成が不誠実な人間は、発表も論文も不誠実なのである」。論文作成の虚偽に関する報道が頻発する中で、著者のこの言葉は重い。

そして、「ドラッカーはこう言っている。『成果をあげる人とあげない人との差は、才能ではない。いくつかの習慣的な姿勢と、基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である』」と、この節を締め括っている。

生き甲斐

著者の主張に賛同すること頻りであるが、特に、「大学病院ではなく関連病院で頑張っている人(ドクター)をほめよう!」、「社員(医療従事者)が楽しく、生き甲斐を感じて仕事を続けることができてこそ、結果的に会社(病院や患者、医療従事者)や組織の利益になるし、人生も充実するのである」という言葉に深い共感を覚えた。