榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

着心地抜群のワイシャツを安く売る鎌倉シャツという会社を知っていますか・・・【続・リーダーのための読書論(45)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2014年9月26日号】 続・リーダーのための読書論(45)

客の立場から

ワイシャツは営業担当者の必須アイテムなので、長いこと、三越で誂えてきた。しかし、数年前から、全て鎌倉シャツに代えてしまった。そして、その着心地のよさとリーズナブルな価格に満足している。

鎌倉シャツ 魂のものづくり』(丸木伊参著、日本経済新聞出版社)は、アパレル業界以外のビジネスパースンにも、いろいろとヒントを与えてくれる。

メーカーズシャツ鎌倉、略して鎌倉シャツは、アパレル製造小売専門店であるが、不思議な会社である。先ず、最主力製品のワイシャツ(ドレスシャツ)は、高品質でありながら、1枚4,900円(税抜き)という安さである。次に、私は丸の内丸ビル店で購入しているが、サイズが豊富である。体にフィットして、動きを妨げない。ネクタイをしない夏物も、襟元がだらしなくならないので、気分も引き締まる。さらに、店長や店員の対応がてきぱきとしていて、気持ちがいい。客の立場からすれば、これで十分なのだが、ビジネスに携わる者としては、なぜ、こういうアパレル業界の異端児的な経営が可能なのかが気にかかる。

業界の異端児

「なぜ、この(高品質の)シャツを4900円で作れるのか」というと、創業以来、「100%リスクを取る」姿勢を崩さず、「会社と社員に嘘はない」上に、「『言いたいことを言う』自由な風土」が全社員のみならず、生産を担当する外部の縫製会社との間でも保たれているからである。これらの精神風土を、創業者・貞末良雄の「ビジネスモデルを支える『高い志』」ががっしりと下支えしているのだ。

「本来MD(マーチャンダイジング)の要諦は、淀みのないタテの流れをつくる垂直統合の構築にある。企画・製造から販売までの流れをロスなく、いかに速やかに流動させていくかが生命線である。鎌倉シャツは、この生命線が高いレベルで機能している数少ない企業の一つである。同社の五適(適品、適価、適質、適時、適所)のジャストフィットの度合が消化率99%(売れ残り率1%)、セール(安売りのバーゲン)なしを実現している」。

これらが、「販売数量は年間70万枚だが、ドレスシャツの国内総生産は、120万枚と言われ、鎌倉シャツのシェアは、すでに6割近くを占める」という実績を生み出している。しかも、国内での同社の販売数量は100万枚が限度と見て、海外進出を進めている。ここにも、世界でメイド・イン・ジャパンの強さを証明したいという思いと、何としても国内生産体制の衰退を食い止めたいという覚悟が込められている。

販売の本質

鎌倉シャツには4名のスーパーバイザー(SV)がいるが、いずれも店長兼任で特定の地域や店舗を受け持っているわけではない。このSVたちが口にする言葉が興味深い。「販売とは五感を使う総合職」、「『イライラ状況』のときこそ笑顔」、「地道に自信と誇りを持って売る」、「店長の理想像は『そこに居るだけでいい』」、「売り上げよりも顧客創造と満足が先」――と、いずれも気負いがなく、自然体だ。鎌倉シャツは、もっともっと伸びていく予感に満ちている。