榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

著者が言うように、英語が違って見えてきた!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2553)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年4月14日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2553)

セルリア・フロリダ(写真1、2)、ブーゲンビレア(写真3)、スパティフラム(写真4)が咲いています。

閑話休題、『東大の佐藤先生と英文法を哲学する――英語がまるで違って見える!』(佐藤良明著、アルク)のおかげで、現代の英語事情について、いろいろと学ぶことができました。

●事実でない想いは、直接法では語らない。
「現代の英米人は、伝聞したことも、仮定したことも、ほとんど直接法のモードで喋りますが、ただ、『もしも』の想いが強まると、Suppose you left her,(あなたがここを出て行くとしても)と、心のモードが変化する。すなわち動詞が直接法のleaveから仮想法のleftに変化する。続く節も仮想法が保たれて、it couldn’t hurt me.(それで私が傷つくなんてありえない)となります」。この「モード」は英文法では「法」を意味します。

●willは現在形である。
「willを使うと話者の判断はこもらなくなって、未来に起こることを、あたかも出来事自体の動きに任せて言うことができる。そういう、いわば『出来事まかせの構え(心のモード)』を法助動詞willは醸し出すというわけです。こうして三人称を主語にしたwillは、外界の今後の動きや傾向を、客観化して表現する物言いになりました。The train will arrive at five.(汽車は5時に着くだろう)。It will rain tomorrow.(明日は雨が降るだろう)」。

●would,could,might,shouldを人は好む。
「実際は(これらが)よく使われるところを見ると、そもそも断定を避けるために使われる法助動詞は、仮想の響きをまといたがるのでしょう」。

●「英語の5文型」を疑う。
「(外国では『5文型』は重視されていないのに)日本の教育現場で『5文型』が重宝されるのは、英単語の列を前に途方に暮れる生徒たちに、『てにをは』をあてがい、それを足掛かりに理解するすべを与えてくれるからではないか、と私は考えています。①SVは『~は~する』と訳す。英語は主語と動詞からできているのだ。――これは何より重要な公理です。②SVCは『~は~である』、または『~は~になる』と訳す。③SVOは『~は~を~する』と訳す。同じVでも、CをとるVと、OをとるVでは異なるのだ。――これも枢要な学習項目です。④SVOOのパターンに要注意。目的語が2つあるが、最初のOを『~に』次のOを『~を』と訳せばよい。I gave him bread.は『彼にパンを与えた』と訳す。⑤SVOCのOは、目的語だから『~を』を付ける。Cの訳し方はさまざまである。We call him John.であれば、『彼をジョンと呼ぶ』となり、He made her happy.ならば『彼女を幸せにした』となる。5文型の教えとは、このように、英語の基本を成す異なった述語形式の例文を、日本語の型に当てはめて理解させるための効率的なツールとして、かくも長きに亘って重宝がられているのでしょう」。

こういう角度から見ると、著者が言うように、英語が違って見えますね!