榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

それぞれの分野の先頭ランナーから急速成長の秘訣を学ぼう・・・【続・リーダーのための読書論(83)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2018年11月12日号】 続・リーダーのための読書論(83)

出会いの効用

出会いは最大のレバレッジ――マーケットクリエイターとのダイアローグ』(板東浩二著、ダイヤモンド社)は、「最先端との出会いが最大のレバレッジを実現する」、「人は出会いにより、多くを学び、刺激を受け、そして変わることができる! 出会いで人の成長は加速する!」という信念の持ち主である著者が、各分野の最先端ランナー8人と本音で語り合った対話の記録である。

今後のAI

「2012年にシリコンバレーで『ディーブラーニング』に出会ったAI普及の鍵を握る若者=岡田陽介」との対話は、こんなふうである。「●岡田=(AIは)既に一部、人間の能力を超えていると思います。ただし、人間の仕事がなくなることはなく、AIは強い味方です。さらに、SF映画のように人間を攻撃することもありませんよ。・・・AIは『ディープラーニング(深層学習=コンピューターが物事を理解するための学習方法のひとつ)』により、一気に進化しました」。

「●岡田=AIは今後、電話やメールのように『ビジネスになくてはならないもの』になっていくはずです」。

「●板東=AIで多くの職業がなくなると言われていますが、ようするに、そのAIを使う側に立てばいいわけですね。●岡田=ええ、機械ができる部分は機械に任せ、機械にはできないことを人間がやればいいんです」。無闇にAIを恐れるな、というのだ。

今後のIoT

「ネット時代の覇者はこうして決まる――IoT、ブロードバンドの進化から見える『勝ちの法則』=藤原洋」の発言には、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズが登場する。「●藤原=そのうち世界中で、コンピューター同士がつながるだろうと思っていました。じつは私、ビル・ゲイツさんとも同世代で、何度か会っているんです。彼は、将来スタンダードになるものを見抜いていました。まだコンピューターが工場や発電所の機械を制御するために使われていた時期に、ビルは『これが進化してマイクロコンピューターになる』と言っていたんです。当時はCPUが4ビットから8ビットになった時代で、パソコンはおろか、電卓程度の情報処理能力しかなかった。なのに『将来、パーソナルな仕事でもコンピューターを使う時代が来る』と読んでいたんです。ビルは『マイクロコンピューターのためのソフトをつくる』から、社名は『マイクロソフト』なのだと言っていました。面白いですよね(笑)。スティーブ・ジョブズさんも同じ未来を予測していて、彼は『大学入学したけど、教授がバカだから会社をつくった』なんて言っていました。最先端の技術を扱うのはいいけど、それには、必ず『その先』があって、彼らはこれを読んでいたんです」。

「●藤原=(次の時代を読んでいる人たちは)他人の評価を気にしませんね。人に向けて仕事するのでなく、結果に向けて仕事するんです」。

「●藤原=アプリでも、すぐ出して、バージョンアップを繰り返していく。多少のバグがあっても、あとで修正パッチを出せばいい、それよりも先に市場を押さえるほうが重要だ、というわけです」。

「●藤原=結論から言えば、第4次産業革命が起こります。そして『情報通信産業が発展する』のではなく『情報通信産業があらゆる産業へと拡散、浸透していく』時代が来ます。・・・次は、IoT(モノのインターネット)による第4次産業革命です。今までのITは、人が情報を受け取り、人が発信していました。しかし今後はモノが情報を発信し、モノがそれを受け取るようになります」。本格的なIpT時代の到来に備える必要があるということだ。

拙速の勧め

「『朝令暮改』がポイントだった!? 『LINE』『C CHANNEL』を世に売り出した人物が語る『予定調和の壊し方』=森川亮」では、森川の生き方が披瀝されています。「●森川=振り返ると、ひとつ得意分野があると自信が持てて、それをやり切ると、何をやってもそれなりのレベルまで行けるようになるんだな、なんて思います」。

「●森川=やっぱり、なんでもやってみないとわかんない部分があるんです。徹底的に仮説は立てるんですが、それでもわからない。だったらまずはリリースして、そのなかからユーザーのニーズをかぎ取って、失敗したものはパッとやめて、人気があればなんでウケてるのか分析してもっとニーズに合うようにしていく、そのサイクルを速くまわすほうが重要かな、と」。巧遅より拙速の勧めである。