榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

世界で最も貧しい大統領の言葉に耳を傾けよう・・・【続・リーダーのための読書論(62)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2016年2月18日号】 続・リーダーのための読書論(62)

最も貧しい大統領

世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉』(佐藤美由紀著、双葉社)から、私たちは多くのことを学ぶことができる。忙しい日常に追われ、忘れかけていた大事なことに気づかせてくれる。

ホセ・ムヒカとは

南米のウルグアイの大統領を務めたホセ・ムヒカが送ってきた人生は、文字どおり波瀾万丈だ。青年時代には極左武装組織の一員としてゲリラ活動を行い、逮捕後、13年間に亘る苛刻な獄中生活を送っている。第40代大統領に就任してからの5年間に、麻薬組織を太らせないための大麻の合法化、妊娠中絶の合法化、同性婚の合法化など、国民の大多数を占める弱者の側に立った画期的な改革を実現した。そして、大統領になる前も、なってからも、退任してからも質素な生活を送り、「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれている。

演説

画期的な改革、質素な生活も素晴らしいが、ムヒカをムヒカたらしめているのは、己の信念の発露たる演説の内容である。演説と、彼へのインタヴュー記事から、そのエッセンスを拾い出してみよう。

●私は貧乏ではない。質素なだけです。
●私は、持っているもので贅沢に暮らすことができます。
●貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。
●人が物を買うときは、お金で買ってはいない。そのお金を貯めるために割いた人生の時間で買っているのです。
●質素は「自由のための闘い」です。
●自由になるための闘いというのは、どれくらい自由な時間を確保できるかにかかっているのだ、と私は言いたいのです。物で溢れることが自由なのではなく、時間で溢れることこそ、自由なのです。
●質素な生活を送ることで確保した「自由な時間」とは、「やりたいことをやる時間」だ。
●改めて見直さなければならないのは、私たちの生活スタイルだ。
●政治とは全ての人の幸福を求める闘い。指導者の仕事は、多数派の貧しい人々の利益を代表すること。
●我々は、健全な消費を考えなければなりません。必要なことに消費することで、市場を拡大することができる。そうすれば、雇用も増え、全ての人々に働く場所ができます。
●不可能なことを可能にするにはさらなる努力が必要です。諦めたら負け。人生ではいろいろなことで何千回と転びます。愛で転び、仕事で転び、今考えているその冒険でも転び、実現させようとしている夢でも転びます。でも、千と一回立ち上がり、一からやり直す力があなたにはあります。その道が実は一番大事です!
 
「私は決して偉人ではありません。刑務所に入ってしまった理由はスピードが足りなくて捕まってしまったからです」という言葉からは、ユーモア精神の持ち主であることが分かる。