榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

上野千鶴子の言葉は、なぜこんなに小気味よく痛快なのか・・・【続・リーダーのための読書論(72)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2017年1月9日号】 続・リーダーのための読書論(72)

小気味よく痛快

上野千鶴子が発する言葉は、鋭く真実を衝いているので、実に小気味がよい。『上野千鶴子のサバイバル語録』(上野千鶴子著、文藝春秋)には、痛快な言葉が満載なので、ほとんど全てのページに付箋を貼ることになってしまった。

人生

一度きりの人生を、どう充実させるか。「●人生のあらゆる幻滅や失望が書物に書かれている。●万人に感じ良く思われなくてもいい。●友情にはメンテナンスが必要」。

仕事

仕事の本質が喝破されている。「●無能で横暴な上司に仕えるつらさ。●人間の本質は、負け戦の時に表れる。●男がパワーゲームに夢中になる理由――男たちをみていると、女に選ばれることよりは、同性の男から「おぬし、できるな」と言ってもらえることが最大の評価だと思っているふしがある。●仕事と夫と子どもを手に入れても――規格品の優等生の女たちは、がんばった分だけ、報酬があると思いこんでいる。仕事のほかに、夫と子どもを手に入れた後で、こんなはずじゃなかった、と愕然とする。●立ちはだかる壁は、迂回せよ。●とどめを刺さず、もてあそべ。●組織の中で戦うか、外で戦うか――戦うにしても、自分のスキルが通用する場所としない場所があるでしょう。例えば、会社という組織で戦うのが得意な人もいれば、組織の外で戦うのが得意な人もいる。自分が一番戦いやすいホームグラウンドを選ぶのは賢いと思う。●組織が桎梏になる人、組織に守られる人――組織は有能な人にとっては桎梏になるかもしれないけれど、無能な人を守ってくれる。人並み外れて自分が優れていると思わない限りは、組織にいたほうが賢明だ」。

恋愛・結婚

著者のリアリズムに徹した恋愛・結婚観だけでなく、その秀逸な表現も勉強になる。「●恋愛が教えてくれること――自分の欲望、愛着、献身、未練、嫉妬、ずるさ、エゴイズム、それに孤独。ただし学ぶためには高い授業料を払わなければなりません。●結婚の定義とは――『自分の身体の性的使用権を、特定の唯一の異性に、生涯にわたって、排他的に譲渡する契約のこと』」。

ひとり

愛する人の死とは、こういうものだろうか。「●記憶はふたりのあいだにある――わたしの一部分が、あなたの死とともに死ぬ。あなたはわたしの一部分をあなたの死とともにあちらがわに持っていってしまう。あなたが覚えているわたしが、あなたとともに死んでしまう」。

老後

最近漸く、私もこういう心境が理解できるようになった。「●下り坂もまた、新鮮である」。