榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

AI時代の到来を怖がるな、ブルーオーシャンでワークアズライフを・・・【続・リーダーのための読書論(75)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2017年7月10日号】 続・リーダーのための読書論(75)

AI時代

人工知能(AI)が発展し、縦横無尽に実力を発揮するような時代が足音高く近づいてきている。そういう時代になったら、人間の働き場所が奪われてしまうというテクノフォビア(テクノロジー恐怖症)が世を覆っている。こういう悲観論に惑わされてはいけない、脱順位争い、そして人間と機械との調和というマインドセットで来る時代に立ち向かえと訴える本が現れた。『超AI時代の生存戦略――シンギュラリティに備える34のリスト』(落合陽一著、大和書房)が、それである。

ブルーオーシャン

「(AIによる)コモディティ化と向き合い、人類の価値を拡張していく。そうした中では、『淡々とやること』というのが、すごく重要になる。つまり、相対的な順位争いではなく絶対的な価値。わかりやすく言うと、『自分は自分の道を信じてやらないといけないし、他人は関係ない』ということだ。それは一見すると、当たり前のことのように聞こえるかもしれない。今まで言われてきた、『自分は自分の道を行く』というのは、競争の上でどういうキャラクターを付けていくかという話だった。しかし今、その意味ではまったくなく、これからやらないといけないことは、全員が全員、違う方向に向かってやっていくことを当たり前に思うということだ。つまり、誰も他人の道について気にかけてない、そして自分も気にしていないというマインドセットだ。今、この世界で他人と違うのは当たり前で、他人と違うことをしているから価値がある。もし、他人と競争をしているならば、それはレッドオーシャン(競争の激しい市場)にいるということだ。つまり、競争心を持つというのは、レッドオーシャンの考え方で、そうではなくて一人一人がブルーオーシャン(未開拓な市場)な考え方をしなくてはいけない」。

マインドセットは重要だが、それだけでは不十分だ。生き抜くためのスキルを身に付ける必要がある。

レッドオーシャンの競争の世界では、人間より機械が強くなってしまうが、ブルーオーシャンの考え方で、何をやるかが決まっていない状況では人間は機械に十分勝てるというのだ。そのとき、ヴィジョンとサーヴェイ(調査)が重要になる。今、この分野では誰が何をやっているのかをインターネットで調べ続けるという作業が絶対に必要なのである。

ワークアズライフ

AI時代の人間の生活スタイルは2つのパターンに分かれると、著者は考えている。「一つは、ブルーオーシャンな考え方をテーマにコンピュータに到達不可能な価値を創出しつづけ、時代を先に進める人。もう一つは、プラットフォームに吸収されて、責任と生存戦略をコンピュータに任せる人だ。これは上下関係に見えるけれど、そうではなく領域ごとに成立する役割分担である。あるところではブルーオーシャンにいるけど、あるところでは責任と戦略をすべてコンピュータに任せているという人がいるはずだ。・・・そのように、ワークアズライフの時代には、責任と戦略の取り方が一人の中でモザイク状になるというか、ある一部に注力して他はプラットフォームに任せて合理化していく時代になってきている」。ワークライフバランス(仕事と私生活のバランスを取る)からワークアズライフ(差異化した人生価値を仕事と私生活の両方で生み出し続ける)への転換の勧めである。