榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

経営者はコロナ禍の最悪事態に備えよ、日本は新しい時代の人材を創出せよ・・・【続・リーダーのための読書論(93)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年12月6日号】 続・リーダーのための読書論(93)

コロナ禍の最悪事態に備えよ

大前研一 日本の論点2021~22』(大前研一著、プレジデント社)は、経営者たちに新型コロナウイルスによる最悪の事態に備えよと警告を発している。

「私は企業経営者に対して『アフター・コロナ(コロナ後)』に備えて『プランB』、すなわち最悪の事態に備えた事業計画案を策定するようにアドバイスしている。『プランA』は『緊急事態宣言が解除された後、徐々に経済が回復していく』というシナリオに基づいた計画で、これは事業規模や生産体制、雇用などを『ビフォー・コロナ(コロナ前)』に戻す準備を進めておけばよかった。・・・最悪のケースを想定した対応策が『プランB』である。人の移動が大幅に制限された今のような経済状態が長期にわたって続く。3~5年も続けば、もはや元には戻らない。この前提でプランBを策定すべきだ。・・・新型コロナ対策で、各国が史上最大規模の景気対策を打って、市場が過剰資金でジャブジャブになって、株価も高騰している現状は、100年前の(スペイン風邪の)状況に近い。そこから坂道を転げ落ちるようにハイパーインフレ、大恐慌、さらに戦争へと進んでいく可能性も頭に入れておくべきだろう」。歴史に学べというのである。

新しい時代の人材を創出せよ

「日本にとって最大の問題は、21世紀に脱皮できていないことである。20世紀後半の日本は、教育によって、均質で平均値の高い人材を輩出し、世界に冠たる工業化社会、世界第2位の経済大国を築き上げた。しかし、21世に入ると、教育がグローバルに普及して、中国はもちろん、タイ、ベトナムのような新興国でも日本と変わらないレベルのものづくりができるようになった。しかも賃金は日本の約5分の1以下という世界だから、もはや単純なものづくりでは太刀打ちできない。・・・(外国のように、日本の企業が大きく成長できないのは)教育の失敗である。20世紀の教育があまりにもうまくいきすぎたために、教育そのものが変えられないのだ。教育が変わらないから21世紀型の人材が育たない。人材が育たないから、21世紀型のDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術によって人々の生活をよりよい方向に変えたり、ビジネスを抜本的に変革すること)企業もなかなか出てこない。教育システム及び、企業や社会そのものが21歳記に移行できない。これが日本の長期低落の根本原因であり、最大の問題なのだ。・・・労働改革が絶対に必要になる。つまり、生産性の低い労働者を企業は解雇できるようにして、表に出したいだけ出させる。代わりに失業保険でカバーしながら、21世紀型のスキルが身につくように、国の責任で再教育を施して雇用市場に戻していく。この循環サイクルをつくり上げるのが、今の日本にとって最大の国家事業なのだ」。先ず、教育から始めよというのだ。

驚くべき見解

私が注目したことが2つある。

著者は、アメリカによるイランの司令官ソレイマーニー殺害に世界で一番恐怖したのは北朝鮮の金正恩だろうというのである。

著者は、フェイスブックの会長兼CEOザッカーバーグが発表した仮想通過「リブラ」は、既存のシステムに取って代わる金融革命を志向するものと高く評価している。

企業経営者、国家の指導者は、大前研一の提言に真摯に耳を傾けよ、と言いたい。