旅に明け暮れた一遍が、民衆に説いて回った教えから何を学ぶか・・・【あなたの人生が最高に輝く時(80)】
【amazon 『一遍上人語録』 カスタマーレビュー 2017年9月3日】
あなたの人生が最高に輝く時(80)
一遍
『一遍上人語録――付 播州法語集』(大橋俊雄校注、岩波文庫)は、校注が施されているだけで、現代語訳は付されていないが、一読の価値がある。
世俗の一切を捨て、旅に明け暮れ、自らが興した時宗の教えを民衆に説いて回った一遍智真(いっぺんちしん。1239~1289年)。時宗は、法然の浄土宗の流れを汲む、念仏が極楽浄土に往生するための唯一の修行だとする教えである。時宗では、やがて踊り念仏が奨励されることになる。
語録
「すべて思量をとどめつつ 仰(あおい)で仏に身をまかせ 出入(いでいる)息をかぎりにて 南無阿弥陀仏と申べし」。「思量」は、思いはかること。
「むかし、空也上人へ、ある人、念仏はいかが申べきやと問ければ、『捨てこそ』とばかりにて、なにとも仰(おおせ)られずと、西行法師の撰集抄に載られたり。是誠に金言なり。念仏の行者は智恵をも愚痴をも捨、善悪の境界をもすて、貴賤高下の道理をもすて、地獄をおそるる心をもすて、極楽を願ふ心をもすて、又諸宗の悟をもすて、一切の事をすてて申念仏こそ、弥陀超世の本願に尤(もっとも)かなひ候へ」。
「となふれば仏もわれもなかりけり南無阿弥陀仏の声ばかりして」。専修念仏の生活が求められているのだ。
「天運にまかすべきなり。空也上人曰(いわく)、『(衣食住の)三業を天運に任せ、四儀を菩提に譲る』と云々(うんぬん)。是他力に帰したる色なり」。「四儀」は、行住坐臥。他力本願の基本方針が強力に打ち出されている。
無宗教
私自身は、極楽、天国や地獄といったものは存在せず、死んだら無に帰すだけと確信しているので、極楽浄土を目指す宗教的な世界とは無関係であるが、一遍の、あれこれ思い煩うことなく、只管、念仏を唱えれば心の平静が得られるという教えは、現代の私たちにも参考になると考えている。