榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

あなたの願いが思いのままに実現する方法・・・【MRのための読書論(30)】

【Monthlyミクス 2008年6月号】 MRのための読者論(30)

頭の中の巨大な氷山

どんな人間の頭の中にも巨大な氷山がゆったりと浮かんでいる。私たちは日常、自分で考えたり感じたり行動したりしていることを、自分で感じている。自分で自分が分かっている。この状態を意識とか顕在意識と呼ぶが、この部分はほんのわずかで、氷山の海面上に出ている箇所に当たる。自分では意識できない、氷山の海面下に隠れている大きな部分を発見し、潜在意識と名づけたのが、あのジークムント・フロイトである。

潜在意識の活用

この誰もが持っている潜在意識を上手に使いさえすれば、誰でも幸せになれる、豊かになれる、希望が叶えられると、『マーフィー100の成功法則』(大島淳一著、三笠書房・知的生きかた文庫)でジョゼフ・マーフィーが述べている。あなたの願望がいかに変わったものでも、またいかに高いものでも、その願望を潜在意識にうまく刻みつけることができれば、願いは必ず実現するというのである。

では、どうしたら、あなたの願望を潜在意識にうまく刻みつけることができるのか。先ず、あなたの願望を視覚化すること、すなわち頭の中のスクリーンにその願望が実現した状態を映し出す。次に、願望を短い言葉にして自分の潜在意識に言い聞かせる。心も体もゆったりとくつろいだ状態の時、すなわち眠る直前や目覚めた直後などに、この一連の行動を毎日繰り返す。

このように簡単な方法だが、注意事項が二つある。一つは、あなたの願望を刻みつけられた潜在意識が必ず願望を実現してくれると心から信じることである。一見不可能に思えることも、可能だと信じるなら、その人にとって可能となる。もう一つは、否定的な考えを潜在意識に送り込まないようにすることである。例えば、失敗を恐れるあまり、そのことばかり考えていると、それが潜在意識に刻みつけられて、現実となってしまう。失敗が心配なら成功した状態を思い浮かべるべきである。困難な問題に出合った時、「もう駄目だ」と思うことは、潜在意識の協力を拒否することになる。また、心の底で自分の属する組織を非難する者は、潜在意識的に自分とその組織との絆を断ち切っていることになる。すなわち、よいことを思えばよいことが起こり、悪いことを考えれば悪いことが起こる。

α波の出現

マーフィーの勧めていることはあまりに宗教がかっている、願望の内容があまりに俗っぽいと不満を感じる人も多いと思うので、科学的に耐え得るものか、検証してみよう。

脳波というのは、脳細胞が出している生体エネルギーの信号であるが、1秒間に何回振動するかをヘルツ(Hz)という単位で表す。脳波が何Hzになっているかで、脳がどんな状態にあるかが分かるようになってきたが、こうした研究の成果として、医学界、生理学界の注目を集めたのがα波(8Hz以上13Hz未満)という脳波である。このα波は、人間が精神的、肉体的に極めてよい状態にある時に測定されるが、特に顕著なのは、禅僧が坐禅を組んで瞑想している時、ヨガの達人が意識を集中してヨガを行っている時などである。また、このように特別な訓練を積んでいない普通の人でも、非常に気分のよい音楽をゆったりと鑑賞している時、何か自分の好きなことに没頭している時、眠りに就く前、気持ちよく目覚めた時などには、α波が出ている。つまり、気持ちの安定した状態、非常に気分のよい状況の時にα波が出るのである。

驚くべきことに、α波が出ている時は、普段は閉じられている意識と潜在意識の間のゲイトが開いて、情報が行ったり来たりできる状態になるという。いわば、α波が出ている時というのは、あなたの願望を潜在意識に送り込むのに高速道路、直通道路を利用するようなものなのである。

人にはそれぞれの生き方があるだろうが、幸せになること、豊かになること、希望が叶えられることを辞退するという人はめったにいないと思う。マーフィーの方法で願望が実現するのならば、これまでとはちょっとだけ考え方を変えてもいいと思う。マーフィーにだまされる覚悟で、あなたも私と一緒に、願望を潜在意識に送り込んでみませんか。