榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

俯瞰的パワーポイントの作り方・・・【MRのための読書論(51)】

【Monthlyミクス 2010年3月号】 MRのための読者論(51)

コミュニケーション力とプレゼンテーション力

日々のMR活動においては、ドクター、薬剤師、看護師、事務、MS、社内の関係者等とのコミュニケーション力がものを言う。一方、説明会、会議等では、ここ一番というプレゼンテーション力が効果を発揮する。

プレゼンテーションの基本

しばしば、最近の若いMRはプレゼンテーションが巧いという言葉を耳にするが、いわゆる上手なプレゼンテーションと、聞き手の心に響くプレゼンテーションとの間には大きな差がある。プレゼンテーション力を深めようとするとき、『わかりやすく<伝える>技術』(池上彰著、講談社現代新書)が、よき家庭教師になってくれる。

著者は、その長いテレビ出演経験から、「ニュース原稿は雄弁である必要があるが、饒舌であってはならない」と述べている。パワーポイントで説明する場合も同じだと言う。苦労して作ったパワーポイントだからといって、用意したもの全てを映し、その画面にぎっしりと詰め込んだ文章全てを読み上げていったら、どうなるか。聞き手は画面の文字を目で追うのに忙しく、話し手の声や思いは聞き手の心に届かないだろう。パワーポイントに文章をたくさん書き込むことは止め、ポイントだけを記し(これぞ、パワーポイント!)、後はポイントを補完するコメントを自分の声で述べていけばいい、これこそ映像と音声のコラボレーションだ、と言うのだ。

パワーポイントの具体的な作り方

著者のやり方と共通する点が多いが、私が実際に行っているパワーポイント作成法を述べてみよう。
①パワーポイント作成枚数を、自分に与えられたプレゼンテーション時間から割り出す。1枚2分を目処とし、これを超えない枚数とする。A3判の紙に鉛筆で枚数分の長方形の枠を書き込む。これは、プレゼンテーションの全体像を一目で俯瞰できるようにするためだ。
②伝えたい内容項目をラフなメモの形で書き出した後、プレゼンテーション全体のストーリーの構想を練り、メモに順番を付ける。これらのメモを①の長方形の枠内に割り振っていくが、この段階では大まかな順番でよしとする。鉛筆書きなので、必要に応じてメモの順番変更、削除、追加などが手軽に行える。
③長方形の枠内にそれぞれの見出しを付けていく。この見出しは、内容を的確に表現できるものを工夫し、文章とはせずに短く体言止めとする。
④長方形の枠内にそれぞれの内容を箇条書きで書き込む。この箇条書きは、1枚につき最大でも7行までとする。
⑤最初の1枚に記すプレゼンテーション全体のタイトルは、聞き手に「おやっ」と思わせるような、意外性のあるものを工夫する。
⑥最後の1枚には、そのプレゼンテーションを通じて聞き手に一番アピールしたいことを簡潔に大書する。「ご清聴、ありがとうございました」といった平凡な文章を記した1枚で最後を締め括るのは、誠にもったいない。
⑦でき上がった俯瞰的設計図に基づき、パワーポイントを作成する。私の場合は、アニメーションなどの技術は敢えて使わず、使用する色は白地に黒と決めている(プレゼンテーションの主役は自分で、パワーポイントはあくまでも脇役と位置づけているため)。ただし、最後の1枚だけは、燃えるような赤い色で画面いっぱいに「情熱」と大書することにしている。
⑧完成したパワーポイントを見ながら、説明文を練る。話す内容の全てを一度、文章で書き表してみることは、漏れやダブリを防ぐ意味で有効である。
⑨パワーポイントを見ながらリハーサルし、実際に何分かかったかを確認する。可能な限り効果的なプレゼンテーションとすべく、必要な修正を施したり、ユーモアの味付けを行う。リハーサルなしのぶっつけ本番で魅力的なプレゼンテーションができるほど、プレゼンテーションは甘くないのだ。

この本には、パワーポイントにとどまらず、「話の地図」、「無知の知」、「三つの魔術」、「隠れマジック・ワード」など、プレゼンテーション力をレベル・アップさせるのに役立つテクニックが満載されている。