榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本を読まない人の末路を直視せよ・・・【MRのための読書論(108)】

【Monthlyミクス 2014年12月号】 MRのための読書論(108)

本を読まない人の末路

「膨大な情報の中から、本当に必要とする情報をセレクトし、体系だてて自分のものにしていくのは、とてもたいへんです。しかし、それができない人々は、時代の流れに取り残されてしまうでしょう。・・・読書で自分を磨いて能力を高めることなく、目の前の仕事をこなしているだけでは、社会人として決して成長しませんし、周りの評価も得られません。そんな人は、使えない人だと見なされて出世できなくなるでしょう。それどころか、会社の業績が傾いたら、真っ先にリストラ要員にされてしまうかもしれません。そうなってから、『ああ、もっと読書をして自分を磨いておくべきだった』と後悔しても遅いのです」と、著者の主張は過激である。

では、どうすればいいのか。「私は、正しい読書術を身につけて、『誰よりもたくさんの本を、誰よりも精密に読み込み、すぐに仕事に応用できるようになる』ことこそが、ただ一つの解決策だと考えています」と、答えは明快だ。

読書の全技術を伝授

読書習慣が薄れつつある現状に対する危機感を踏まえ、『大人のための 読書の全技術』(齋藤孝著、KADOKAWA)は、「社会人にこそ、読書術が必要な理由」、「読書を習慣づけるための秘訣」、「大量の読書を実現する速読の技術」、「読書の質を向上させる精読の技術」、「読書の効率を最大にする本選びの技術」、「読書で得たものを仕事で使うアウトプットの技術」、「社会人が今、読んでおくべき50冊」から構成されている。

読書によって広がる世界

稀代の読書家である著者が渾身の力を込めた本だけに、経験に裏付けられた読書の技術満載だが、単なる技術書に終わっていないのが、本書の魅力だ。 

「森のような脳内図書館を構築すれば、私たちの心はより豊かなものになっていく」という指摘には強い共感を覚える。私のブログ「榎戸誠の情熱的読書のすすめ」(http://enokidoblog.net/)の第1章~第12章は、まさに、森のような脳内図書館を目指しているからだ。

「本と人との関係は、恋愛に少し似ています。書店の店頭で本を購入するのは、一目惚れしたようなものです。しかし残念ながら、一目惚れしたときのテンションは日々薄れていってしまいます。・・・だからこそ、本を買ったら、その日のうちにさばいておく。つまり、一目惚れしたテンションのまま、(さっと目を通して)一気に中身を把握しておくべきなのです」。

「そもそも教養というものは、引用力そのものであると考えています。極端なことを言えば、引用ができない人は教養がないということです」。

「あまりにも難解なものは、自分なりの読みさえできません。そこでどんなにあがいても時間の無駄になってしまいます。解説してくれる人がいてこそ、なるほどこういうことなのかとわかる本もあるのです」。そういうときは、無理せず、解説書を活用せよというのである。
 

営業活動と読書

「『アウトプット力』とは何なのか・・・それは表現する力であり、突き詰めると『コミュニケーション力』とほぼ同じものだと思います。日常生活にしても、仕事にしても、コミュニケーションが存在してこそ成り立っています。特に仕事は、そのほとんどがコミュニケーションをベースとしています。そのコミュニケーションと読書が深くつながっていることを知り、意識すべきだと思います。そのつなげ方の一つが、『本に触れながら(人と)話す習慣をつけていく』という方法です」。全く同感だ。

「営業の基本は人の信頼を得るということにあります。・・・極端なことを言えば、コメント力の有無で一生が決まることにもなりかねないのです。・・・本を読むことで、文章の組み立てが頭に入ってコメントの構成力が向上します。さらに知識や教養が身につくので、すばらしい言葉を自在に操れるようになります」。

「『想像力→理解力→予測力→提案力』という複数の力を働かせることで、相手に『この人は頭脳がしっかりしている』という印象を与え、信用を勝ち取ることができるのです」。これらの力を効率的に身に付ける一番の方法は、やはり読書なのだ。