榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「コミュニケーション力=語彙力=教養」の鍛え方・・・【MRのための読書論(134)】

【ミクスOnline 2017年2月17日号】 MRのための読書論(134)

コミュニケーション力

MR活動に一番求められるのは、ドクターを初めとする医療関係者とのコミュニケーション力ということは誰もが実感していることだろう。仕事をスムーズに進めていく上で、社内外の人たちとのコミュニケーションも重要である。さらに、私生活においてもコミュニケーションは人間関係の根幹を成している。

語彙力こそが教養である』(齋藤孝著、角川新書)の著者は、「使う言葉のレパートリーが少なかったり、平易な言葉でしかものを語れなかったりすると、『物足りない人』という印象を持たれます。反対に、あなたの語彙力が豊かであれば、仕事でもプライベートでも『一目置かれる存在』になれるのです」と断言している。その人にコミュニケーション力が備わっているか否かは、会話を交わすなり、メールをやり取りすれば、たちどころに明らかになってしまうから、疎かにできないのだ。

語彙力=教養

では、どうすればいいのか。語彙力を鍛えればいいというのが著者の考えであり、知的好奇心が絶えず刺激されるような語彙トレーニングの具体的な方法が提示されている。語彙が豊かになれば、周りから一目置かれるだけでなく、見える世界が変わってくる、人生そのものが楽しくなるというのだ。

「語彙とは『教養』そのものである。しかもその『教養』は、会話の表現力や説明力に直結し、一瞬にして自分の知的レベルを映し出す」。

毎日の読書が王道

語彙力を向上させるには、どうすればいいのか。語彙力を鍛えるには、先ずインプットしなければならない。インプットに当たっては、仕事やスポーツと同じように、語彙にも「量が質に転化する」ポイントがあるという著者の指摘は説得力がある。

インプットの王道は、毎日の読書である。「本を読む習慣が、半年後、1年後、5年後の語彙をつくり、あなたをつくっていくのです。なんとなくSNSを見ようとする手を止め、オフラインの読書に切り替えましょう。たとえば、電車に乗ったらカバンから本を取り出す。カフェに入ったらまず本を開く。夜寝る前には必ず読書の時間をとる。こうした生活を意識的に送ることは、毎日5キロ、10キロ走るようなものです。継続することで知的体力がじわじわとついていき、頭を使い続けてもあまり疲れなくなっていく。語彙が増えていくのと同時に、『思考の底力』がつくのです。まさに語彙トレ、ですね」。

ワンランク上の読書

より深い理解を得たいなら、自伝を読めとアドヴァイスしている。具体的には、『福翁自伝』と『氷川清話』が挙げられている。

また、文脈で語彙を捉えるようにすることを勧めている。例えば、「あらゆる文脈で『大量虐殺』という言葉を繙き、つなげ、イメージを持つことで、この漢字四文字の言葉にどんどん厚みが増していくのがわかるのではないでしょうか。『知っている』の深度が、まったく違ってくるのです。文脈をとおして、初めて本当の意味で『知っている』と言える言葉になる。これぞ本当の教養と言えませんか?」。

即効策

王道とは言えないが、即効が期待できる策も紹介されている。中学受験用の四字熟語集や慣用句集に目を通して、短期に集中的に語彙を増やすという方法である。

読書以外

読書以外の方法でも言葉は磨けると、●世界観と語彙をつくる歌詞、●現代人必須の語彙収集所、インターネット、●インプットの宝庫、アマゾンレビュー、●良質なテレビ番組、●語彙のヒントが溢れている、情報量の多いドラマの脚本、●翻訳と語彙の妙味が詰まっている、洋画の日本語字幕、●電子辞書、タブレット端末――の活用を勧めている。