先延ばし人間に夜明けは来ない・・・【MRのための読書論(115)】
自己実現のバイブル
これまで、かなり、やりたいことを好きなようにやってきた人生と自負していたが、『自分のための人生――一日一日「自分を大事にして生きる」生活術」(ウェイン・W・ダイアー著、渡部昇一訳、三笠書房)を読んだら、もっと若い時にこの本に出会っていたらと悔しい思いに襲われてしまった。
自分で選択せよ、そして今日を大切に
著者が本書で一番言いたいことは、2つにまとめることができる。1つは、人生のあらゆる問題は、全て自分で選択することができる、自分で解決することができるということだ。もう1つは、今日一日を徹底的に大切に生きよということである。
なぜなら、「幸運」と違って、「幸福」は自分で選び取ることができるというのだ。感情は自分の外に原因があって起こるもので、自分では選択できないものと思われがちだが、感情も幸福も自分で選択できるというのが、著者の考え方である。自分の感情を他人のせいにするというのはとんでもない思い違いで、自分の考え方、見方を深めることによって、どんな感情でも自分で選択できる、そして、感情を人のせいにしないということが「自分のための人生」の出発点になると断言している。幸福もまた然りである。
自分の考えを自分で選択できるようになれば、自分の意思では自由にならないことと、自分の意思で自由になることがはっきりしてくるだろう。例えば、他人が下す私の評判とか評価は私の自由にはならない。私を人が褒めてくれるかどうかは相手の勝手である。他人の評価は自分では動かせないのだから、他人の評価など気にしない生き方をしようというのだ。
過去についてはじたばたしても始まらない。起こってしまったことは、もう変えられないからだ。また、未来も自分では左右できないものである。自分で変えられないことをくよくよ悩むのは時間の無駄である。それよりも、やりたいことができる今に全力を投入しようというのだ。
我々が一番大切にしなければならないのは現在である。やりたいことをやらずに死んでしまった人がいかに多いことか。そう考えると、今やれるのにやらずに先延ばしするのは甚だしい愚策、悪手だということに気づくだろう。
著者の考え方は極端過ぎると思う向きもあるかもしれないが、我々が自分で選択した人生を送る覚悟を決め、今日に焦点を絞って全力を傾注していくと、目指す自己実現に近づいていく、自己実現が進むと、自分だけでなく、周囲も幸福にできる人間に成長できるというのだ。著者の考え方は、「欲求5段階説」で知られるアブラハム・マズローの自己実現理論に通じるところが多い。
珠玉の言葉たち
「死は永遠であり、生は息つく間もないほど短い。そこで自問してみよう。『本当にやりたいと思うことをしないでいてよいのだろうか』。『自分の人生を他人の望むとおりに送っていてよいものだろうか』。『やりたいことを先へ延ばすのが賢明な生き方だといえるのだろうか』」。「他人のために、しかも自分の人生にとってまったく重要でない人間のために心が動揺するほど、自分は安っぽい人間ではないはずだ」。「『成長心』が人間の器を大きくする」。「自分の価値は自分自身が決めるもの」。「幸福とは自分ではどうにもできないような事柄に関しては不平を言わないということなのだ。不平は自分に自信のない人の慰めである」。「自分の価値を、他人が自分をどう見るかと結びつけるのも愚かなら、外面的な業績によって決めるのも同じく愚かな行為である」。「あなたは人に認められたいと努力したり、あるいは認められなかったことを気にしたり――そういうことに時間を浪費しすぎてはいないだろうか」。「自分の言うことに誰かが反対したとき、それで傷ついたり、コロコロ意見を変えたりしないで、自分に同意しない50パーセントの人間の一人に出くわしたのだと思うようにすればよい」。「自分とは違うタイプの人に多く会えば会うほど、今まで自分がどれほど損をしていたか、自分の恐怖心がどれほど愚かなものだったか、よくわかるだろう」。「何でもかまわない。2週間、やりたい放題やるのに十分なお金があるとしたら、何をするだろうか」。「先延ばし人間に『夜明け』は来ない」――一つ一つが胸に刺さるなあ。
戻る | 「MRのための読書論」一覧 | トップページ