スマホを手放せば、脳がひらめく・・・【MRのための読書論(145)】
編集長の覚悟
Monthlyミクス2018年1月号で、沼田編集長が、「新しい時代の営業人財や営業組織、マーケティング、さらにはMR一人ひとりの生産性を向上させるプランを提案し、それによって構築したミッションの実行から成功までをミクスが全面サポート」することを宣言している。業界情報を伝える媒体は多いが、読者と共に来る変化に立ち向かうという姿勢を明確にする例は珍しい。
スマホを手放す
環境の激変に直面している企業ならびに社員が身に付けるべきは、忍び寄る変化に気づく察知力、正しい情報に基づく意思決定力、勇気を奮って迅速に行動に移す実行力である。この意味で、『退屈すれば脳はひらめく――7つのステップでスマホを手放す』(マヌーシュ・ゾモロディ著、須川綾子訳、NHK出版)は、あなた自身に気づきをもたらし、スマホを手放す勇気を与えてくれるだろう。
7つのレッスン
著者の提唱する「退屈すれば脳はひらめく」プログラムは、7つのレッスンで構成されている。●レッスン1は、自分を観察する。「まずは自分のデジタル機器の利用状況を把握します。結果を知ると、ほとんどの人がショックを受けるはず」。●レッスン2は、移動中はスマホをしまう。「移動中はスマホを見えないところにしまいましょう。つまり、歩きながらメールを打つのは禁止!」。●レッスン3は、まる一日、写真を撮らない。「料理も子猫も子どもの写真もだめ。いっさい禁止」。●レッスン4は、例のアプリを削除する。「『ないと生きていけないアプリ』をひとつ捨てましょう(大丈夫、死にません)」。●レッスン5は、フェイクケイション(偽休暇)をとる。「オフィスにいながら外界との連絡を断ちましょう」。●レッスン6は、いつもとは違うものを観察する。「気づく能力を取り戻しましょう」。●レッスン7は、プログラム・メニューのまとめ。「すべてのレッスンのしあげとして、退屈する力を使って人生を理解し、目標を定めましょう」。
スマホの脳への影響
レッスン1に関して。「ドーパミンという神経伝達物質は、ある経験を脳に記録し、それをくり返すようにうながすことで知られているけど、これはセックスやドラッグだけじゃなく、スマホをいじってるときにも作用します。・・・カウフマンはドーパミンを『発明の母』と呼び、ドーパミンの量には限りがあるのだから、それを何に使うのか賢く判断すべきだと説いています」。「新しいテクノロジーを使いこなすことで、それまで脳がしていたことをまる投げするようになっていたんです。自分の脳の役割をアプリやオンラインカレンダー、追跡システム、ソーシャルメディアにどんどん任せたせいで、脳は働かないことに慣れてしまったわけです」。
レッスン2に関して。「テクノロジーはこちらが気づかないほど巧妙に私たちのあり方を変えています。知れば知るほど、仕事や本に集中する能力が変わっただけじゃないことがわかります。テクノロジーのせいで、私たちは生身の人間にちゃんと向き合いづらくなっているんです」。「従来型の『ダムフォン(スマートじゃない携帯電話)』との比較で、スマホ利用者の脳の各部位について電気的な活動を測定したところ、親指と人差し指の先端につながる大脳皮質の活動が、スマホの利用時間に比例して増えていることがあきらかになりました。・・・脳をつくりかえていることになるんです』。
レッスン4に関して。「脳の機能向上をうたうスマホゲームには効果がないと、ザック・ハンブリック博士が何年もまえから指摘していました」。
レッスン5に関して。「思いもよらない提案をしました。それは平日に休みをとること――仕事もメールもスマホもなし。とにかく『リラックスして過ごす』というものです。・・・やがて変化が起きました。私生活を取り戻したのはもちろん、職場に戻ったときに以前よりも同僚と会話をするようになりました」。「昔から芸術家たちは、創造には孤独――あるいは退屈すること――が欠かせないと知っていました。今ではビジネスでもそれが大切だと、経済学者や社会政策の専門家、科学者たちは言います」。「フェイクケイションをとりましょう。私たちは猛烈なデジタル攻撃のせいで疲れ果て、注意力が散漫になり、日常生活を超えた次元で考えることができなくなっています。その攻撃から少し離れる、という意味での休暇です」。
レッスン6に関して。「2010年、彼(ニック・ビルトン)が(スティーヴ・)ジョブズに『ところで、子どもたちはiPadを気に入ったかい?』と訊いたところ、iPadの生みの親からは『いや、うちではテクノロジーを制限してる』とぶっきらぼうな答えが返ってきた」。
レッスン7に関して。「マキューンの手法は、自分にとって何がいちばん大切かを見きわめ、それを中心に『人生を設計する』ことをめざします。彼はそのプロセスを3つの基本的段階に分けています。第1段階では『本当に重要なことが何かを見きわめる時間をつくる』。第2段階では『大事ではない活動をすべて排除する』。仕上げの第3段階では、『自由になった資源を再分配し、もっとも重要と判断したことを追求するためにそれを用いる』」。
退屈を受け容れる
今や、インターネット中毒が蔓延している。退屈しないと、クリエイティヴにはなれない。テクノロジーを手放して、退屈を受け容れ、ひらめきを手に入れよう――というのである。
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