弱い自分を認めて、強い自分をつくろう・・・【MRのための読書論(164)】
ベスト・セラー
ニューヨーク・タイムズのNo.1ベスト・セラーにランクされた『立て直す力――感情を自覚し、整理し、人生を変える3ステップ』(ブレネー・ブラウン著、小川敏子訳、講談社)には、どんなことが書かれているのだろうか。
自分を立て直す
挫折から立ち上がり、失敗を乗り越え、気持ちを立て直して、より上質で幸せな人生を実現するためには、3つのステップを踏む必要がある。
●ステップ1=感情を自覚する――現在のストーリーを理解する。「自分の気持ちを確かめ、自分の思考とふるまいの裏にどんな感情があるのか理解する」。
●ステップ2=整理する――ストーリーを点検・修正する。「悪戦苦闘のさなかに作り上げた現在のストーリーを客観的に点検し、なにが真実でなにが自己防衛的な思い込みなのかを見極め、しあわせになるために修正すべきキーポイントを見つける」。
●ステップ3=劇的に変わる――最良のストーリーを生きる。「現在のストーリーを修正し、新しい結末の最良のストーリーを書く。勇気を出して新しいストーリーを生きれば、取り巻く世界が変わり、人生、愛する人との関係、子どもとの関係、リーダーシップをとる方法が変わる」。
好奇心
自分の感情を自覚するに当たり、好奇心の重要性が強調されている。「人間が好奇心を抱くと脳内の化学的構造が変化し、より良く学び情報をとどめやすくなる。・・・好奇心とは、すでにもっている知識の隙間を見つけ、それを補いたいという感情である」。
点検
傷ついた心を整理するときの留意点が記されている。「期待、失望、憤りは誰にとっても、よく見つめ、点検してみる価値がある。その必要がないという人に、いままでわたしは出会ったことがない。人生ではさまざまな形で傷心を経験する。そのなかで依存症、心身および行動面の問題による傷心は、じゅうぶんには話し合われていない。愛する人の苦しみをどうにもしてやれないという無力感から生じるつらさは、長期化すればするほど、人に話すことが必要となる。悲しみについて沈黙することは、誰のためにもならない。深く悲しむことができなければ、悲しみが癒やされることも、ゆるすこともできない」。
羞恥心、完璧主義、他人との比較
心を整理するには、羞恥心、完璧主義、他人との比較に目を向ける勇気が求められる。「完璧主義にはつねに羞恥心がつきまとう。それは『どうしたら自分の最善を尽くせるか?』ではなく、『人からどう思われるだろう?』という思いが秘められているからだ。完璧主義の努力は健全とはいいがたい。完璧主義のストーリーに陥っているかどうかを見抜くには、次の問いかけをしてみるといい。『自分の化けの皮がはがれたように感じたできごとはあったのか。人に見せたくない自分をうっかりさらしてしまったと感じた場面があったのか。トランプのカードでやっとのことで築いた家が崩れてしまったように感じたのか』。・・・(自分を)人と比較することは、創造性とよろこびを人生から吸い取ってしまう」。新しいストーリーからは、羞恥心、完璧主義、他人との比較を追い出さねばならないというのだ。
信頼
挫折して倒れると、自分への信頼、他人への信頼が一気に揺らいでしまう。信頼関係を築くためのアドヴァイスが挙げられている。①相手との境界線を尊重する、②やると言ったことは確実に実行する、③自分の失敗を認め、謝罪し、責任をとる、④自他を問わず秘密を守る、⑤一貫性を保つ、⑥率直である、⓻他者の意図、言葉、行動には、できる限り寛容な解釈をする――の7つである。なお、「一貫性を保つ」は、「快適さよりも勇気を選択する。楽しい、速い、簡単よりも、正しさを選択する。自分の価値観を表明して終わるより、それを実践することを選ぶ」と説明されている。
戻る | 「MRのための読書論」一覧 | トップページ