このプレゼン手法を身に付ければ、聞き手に魔法をかけたかのような効果が生まれる・・・【MRのための読書論(210)】
魔法
現役時代の私は、プレゼンテーションの名手と自負していた。ところが、このたび、『THE POPーUP PITCH 最もシンプルな心をつかむプレゼン』(ダン・ローム著、花塚恵訳、かんき出版)を手にして、自信を粉々に打ち砕かれてしまった。ダン・ロームが考案したTHE POPーUP PITCHというプレゼン手法を身に付ければ、聞き手に魔法をかけたかのような効果が生まれることが分かったからである。
覚悟と訓練
著者は、聞き手の目に訴える10ページピッチを2時間で作成し、7分のプレゼンで聞き手をストーリーに巻き込み、心を動かすことができると断言しているが、物事はそう簡単ではない。この最強のプレゼン手法を身に付けるには、それなりの覚悟と訓練が必要である。以下にそのポイントを示すが、具体的な作業については本書を手元に置いて学んでほしい。2000円弱の支出で魔法使いになれるのだから、安いものだ。
ポップアップピッチ
「ポップアップピッチ」メソッドは、自分が描いた「スケッチ」とストーリーを構築する「フォーマット」を組み合わせる、至ってシンプルな手法である。すると、たった2時間で、10ページで構成されたピッチが完成し、7分でプレゼンできる説得力のあるストーリーとなるのだ。
ビジュアル・デコーダー
先ず、1時間かけて、シンプルな絵で下準備をする。「要は、頭のなかにあるものを絵や図にするのだ」。「ビジュアル・デコーダーとは絵を描き込むためのシンプルなフレームワークを意味し、それは1枚の紙でつくる」。「ビジュアル・デコーダーは四つ折りにした単なる紙にすぎない。折った紙の外側が表紙と裏表紙、内側が4つのパネルとなる」。
①表紙=タイトル(言葉で表現する)→②人・物(絵で登場する人物・物を表現する)→③場所・位置(絵で位置関係を示す)→④数(グラフで表現する)→⑤いつ(言葉で変化を時系列で示す)→⑥裏表紙=教訓となること(言葉か絵、または両方で表現する)
10ページピッチ
次の1時間で、10ページピッチをつくる。「10ページピッチは、聞く人の心を動かすストーリーを創作するためのフォーマットである」。
①タイトル(明確)→②状況の共有(信頼)→③問題点(不安)→④解決できるという感情(希望)→⑤誤った期待(厳しい現実)→⑥かなり大胆な提案(ワクワク感)→⑦本当にやればできる(勇気)→⑧行動の呼びかけ(決意)→⑨すぐに得られるメリット(報酬)→⑩長い目で見たメリット(本心からの願望)
この10ページをストーリーに組み込むと、次のようになる。
①この良き日にともに目指すべき目標がはっきりした。
②しかし、行く手には困難が待ち受けている。
③それを乗り越えることができたら、どんなに素晴らしいだろう。
④だが現実的に考えて、乗り越えるには新たな経路が必要だ。
⑤ラクできそうな道もあるが、それは誤った期待でしかない。
⑥本当に必要なのは、かなり思い切ったルートだ。
⑦そのルートを進むのはきついだろうが、必ずやり遂げることはできる。
⑧まずやるべきことはこれだ。
⑨やり始めてすぐに得られるメリットがいくつかあるので、続けやすいはずだ。
⑩やり続けた先にしかない成功というものがあり、それが手に入ったら、最初の目標などどこかへ吹き飛んでしまう。
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