榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

営業マンは、お客様の人生の応援団長になれ・・・【MRのための読書論(227)】

【ミクスOnline 2024年11月22日号】 MRのための読書論(227)

営業の神様

『営業の神様――ヤマナシさんが教えてくれたこと』(早崎郁之著、SBクリエイティブ)を読んで驚いたのは、47年間、営業の世界で生きてきた私が自らの営業の基本原則としてきたことが、そっくり再現されていたからだ。

本書は、中古マンションの販売とリフォームを手がける不動産会社の営業職の主人公・早崎郁之が、不思議な人物・ヤマナシさんに出会い、その教えを受けて営業成績を上げていくという物語である。著者の実体験に基づいているだけに、臨場感豊かで、しかも強い説得力がある。

「ある日、僕は『営業の神様』と出会った。彼と過ごした180日。そこで教えてもらったのは、単なる営業テクニックではなく、仕事、そして人生を成功に導く大切な教えだった」。

営業を愛する

●営業マンは商品を売らない。お客様のなりたい未来を一緒に探して、その実現を手伝う仲介者である。

●お客様は、自分の価値を認めてくれる人、自分の叶えたい未来を一緒に考えてくれる人、つまり恋愛感情抜きで自分を心から愛してくれる人から薦められた商品であれば、それを良い商品と感じる。

商品を愛する

●商品を相手に売りたいなら、営業マン自身が24時間、365日、自分の商品を我が子のように愛すること。

●営業マンは、商品の最初のお客様である。営業マン自身が買いたいと思っていないのに、その商品の良さがお客様に伝わるわけがない。

●どんな商品でも美点を見つけられる。商品の美点をノートに100個書き出す。そして、その商品を心から愛すること。

お客様を愛する

●拒絶や失敗を怖がって、自分と近い価値観のお客様とだけ付き合っていては、できる営業マンにはなれない。

●苦手なお客様や価値観の異なるお客様など、どんなお客様にも全力で愛を持って立ち向かっていくこと。

●お客様の心に近づくには、相手を完全受容、完全肯定すること。お客様の人生の応援団長になる。

●自分の価値観でお客様を判断しない。お客様が大事にしているものを営業マンも大事にする。

自分を愛する

●成功したいなら自分を愛しなさい。

営業マン・榎戸誠の場合

製薬企業・三共(現・第一三共)のMR(医薬情報担当者)時代の私は、MR活動は、高度の専門情報を医師、薬剤師に提供する営業活動だと考えていた。「この先生の一番のニーズ、ウォンツは何か」、「先生にとって、現在の優先順位はどうなっているのか」、「患者さんや先生のお役に立てることで、自分にできることは何か」といったことを把握した上で、情報を提供していた。そして、思い切って、先生に「患者さんや先生のお役に立ちたいのですが、私がお手伝いできる課題を教えていただけませんでしょうか?」とストレートに聞き、その課題を聞き出したら、「今日から、先生のお役に立てるよう思いっ切り頑張ります。今日以降、私が本当に先生のために頑張っているか、お手数ですが、監視をお願いいたします」と、先生を私の監視役に仕立てていたのである。

営業とは、お客様の夢を叶える人生のパートナーだという著者の熱い思いがひしひしと伝わってくる一冊だ。