榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

いい加減でだらしない男と、その男への未練を絶ち切れない女の物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(367)】

千葉・野田の金乗院の境内では、さまざまな色のボタンが艶やかに咲き競っています。花筏ならぬヤエザクラの花絨毯が行く春を感じさせます。

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閑話休題、映画『浮雲』(DVD『浮雲』<成瀬巳喜男監督、高峰秀子・森雅之・岡田茉莉子出演、東宝>)を久しぶりに見直して、男と女の関係についていろいろと考えさせられました。

ヒロインの幸田ゆき子は、太平洋戦争中に義兄に犯され、この男から逃れるために軍属を志願して仏印(ベトナム)に渡り、そこで農林省から派遣されてきていた役人の富岡と出会います。二人は愛し合うようになるのですが、敗戦で引き揚げてきて彼を訪ねると、彼には妻がいるではありませんか。失意のゆき子は米兵の愛人に身を堕とすなど、投げやりな生活を送ります。そんな彼女を、役所を辞めて事業もうまくいかない富岡が時々訪ねてきて、くっついたり離れたりの関係がずるずると続いていきます。

一方は、生活力がないくせに、あちこちで女をつくる、いい加減でだらしない男。もう一方は、裏切られても傷つけられても、その男への未練を絶ち切れない女。人間というのは、どうしてこうも情けない存在なのでしょうか。

敗戦直後の混乱を背景に自堕落な男女の関係が暗いトーンで描かれていきますが、124分間の物語の最後の最後に至って、哀切ですが感動的な結末が訪れます。

堕ちていきながらも美しさを失わない高峰秀子が印象に残ります。