榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

澤地久枝と落合恵子が若い人たちに伝えたいこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(414)】

【amazon 『われらが胸の底』 カスタマーレビュー 2016年6月10日】 情熱的読書人間のないしょ話(414)

私の書斎では、フクロウが気持ちよさそうに居眠りしています。庭のナツツバキが蕾をたくさん付けています。

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閑話休題、対談集『われらが胸の底』(澤地久枝・落合恵子著、かもがわ出版)では、澤地久枝と落合恵子がそれぞれの人生を振り返りながら、日本の現状に対する危機感を率直に語り合っています。

「若い人たちへの伝言」の章に、このような一節があります。「●澤地=一人ひとりが、今どういうところに立って、自分に何ができるか、真剣に考えてほしい。特定秘密保護法が成立し、集団的自衛権の行使容認、安全保障関連法案の強行採決と、憲法を無視する政治の動きが続くわけですが、世の中の風潮について考える人が増えれば、世の中は変わると思っているわけです。その人たちは、投票する権利は奪われていませんからね。●落合=どんな時代になっても、いかなる圧力があっても、人から『考える自由』と、『夢見る自由』は奪えない。ほかに何もなくても、それが最後の財産だと思う。ほんの僅かな想像力さえあれば、見えてくるもの、拓くものは必ずありますね」。

「●落合=遠い未来を見つつ、私たちが直近でがんばらなければならないのが、来年(=2016年)の夏の参議院選挙ですよね。それぞれの首長の選挙があれば、そこでがんばる。一つは今の憤りと、あるいは針の目ほどかもしれないけれども、希望をどこまで私たちが持続しうるか。政権与党は、『反論している者もそのうち忘れる』と思っています。『一億総活躍時代』とか言って、また経済をもち出してきました。いつもそうなのです。あのやり方に、慣れてしまってはいけない。それから、起ることそれ自体にも慣れてはいけないと思うのです。怒り続けていると、その状態に慣れて、自分の怒りを新鮮なものとして感じとれなくなってしまう。怒る自分を大事にしなければならないし、持続する自分を見つめていかなければならない。そこで、私は、いつもひとりに戻ります。自分に戻って、他の人たちとどうやって手をつないでいくかを考えます」。

「●澤地=治安維持法下で、国防保安法だとかいろいろな法律を作り、隣組も設け、批判的なことを言ったら、隣の人に刺された(=当局に密告された)わけです。だから、みんな賢く保守的になって、戦争一色の世の中がきたのです。それを考えれば、まだ私たちは闘う力もあるし、世の中は完全に閉塞されてはいません。●落合=今の政治を見ていて、戦線統一ができるかどうかわからないという、悲観的なカケラのようなものも私の中にはあります。それでも言い続けなければならないという現実です。同時に、一人でも私たちと同じように考える人を増やさなければならない」。

「●落合=このあいだ福島に行ってきたのですが、最初に行ったときや、2年目、3年目とちがって、いま、どう言ったらいいのか、静かな怒りのなかにおられる人が多い。『福島に住んでいる私たちの存在は、福島以外に住んでいる人たちの記憶から消されていくのですか』とお年寄りがおっしゃった。私たちは、これにも応えなければならない。夜陰に乗じるかたちで、九州電力川内原発の再稼働をして、このあとさらに再稼働をしていってしまう可能性もあります」。

「●澤地=18歳に選挙年齢が下がったことで、自民党は若い人たちの票はぜんぶ自分たちに来ると思っていたのよね。でも、若い人たちは、いままでの政治や選挙の結果に毒されていなくて、純粋に行動している。私はそれを支えていきたい」。

言葉だけでなく、行動でも示している二人の見解だけに、説得力があります。とりわけ、「私たちは、選挙で投票する権利は奪われていない」という発言が心に重く響きます。