確かに、モオツァルトのかなしさは疾走する。・・・【ことばのオアシス(118)】
【薬事日報 2013年7月3日号】
ことばのオアシス(118)
確かに、モオツァルトのかなしさは疾走する。
――小林秀雄
一世を風靡した文芸評論家・小林秀雄の『モオツァルト』(新潮文庫『モオツァルト・無常という事』所収)の一節。
この言葉のすぐ前に、「ゲオンがこれをtristesse allante(流れゆく悲しさ)と呼んでいるのを、読んだ時、僕は自分の感じを一と言で言われた様に思い驚いた」と記されていることから、アンリ・ゲオンの『モーツァルトとの散歩』(高橋英郎訳、白水社)の影響を受けた表現であることが分かる。
上掲の言葉には、「涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる。・・・こんなアレグロを書いた音楽家は、モオツァルトの後にも先きにもない」という文章が続いている。
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