榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

卵子は老化するという衝撃的な事実・・・【山椒読書論(9)】

【amazon 『卵子の話』『赤ちゃんは、待ってくれない!』 カスタマーレビュー 2012年2月18日】 山椒読書論(9)

卵子の話』(浅田義正・松島美紀著、シオン)には、驚くべきことが書かれている。

著者の浅田義正は不妊症治療の第一人者であるが、「女性の卵子(らんし)は老化する」というのだ。女性には、誕生前の母親の胎内にいる段階で既に、卵子の元となる細胞が生じており、卵子はその女性の年齢と同じだけ年を取っていくというのだ。

しかも、女性の卵巣に蓄えられた原始卵胞(卵子の素)は、女性の誕生時には約200万個あるが、その後、増えることはなく、女性が年齢を重ねる毎に自然減少していき、小学校入学時点では約50万個、月経開始時点では約20~30万個、閉経直前には1000個という推移を辿る。

その上、原始卵胞は数が減っていくだけでなく、女性の年齢とともに老化していくのだ。このことは、妊娠する力が低下していくことを意味している。35歳ぐらいから段々と下がり始め、40歳を過ぎると妊娠はかなり難しくなる、と著者が述べている。これは原始卵胞が古くなることが大きな原因であるが、その他に、子宮の疾病が増えてくること、ホルモンのバランスが崩れてくることなども影響している。そして、閉経の約10年前から、ほとんど妊娠できなくなるというのだ。

出産は時間(年齢)との勝負なのだということが分かる。「ホルモンのバランスがよく、子宮や卵巣の問題が少なく、妊娠や出産に関する機能が十分に成熟し、子育てする体力も精神力も十分にある、つまり心身、卵子・卵が共に元気で、子供を産み、育てることができる期間、それが妊娠に適した時期」であり、その時期は20代~30代前半というのが、著者の結論である。

社会に出たら、仕事も大切、いろいろな経験を積むことも大切、結婚も大切だが、卵子についての正しい知識を持って、人生を設計してほしい、結婚・妊娠・出産の優先順位を上げてほしいというのが、著者の願いである。

この本は、内容にとどまらず、豊富なイラストも素晴らしい。

不妊で悩むカップル向けの『赤ちゃんは、待ってくれない!――妊娠・不妊を左右する「卵子」の話』(浅田義正著、内村月子漫画、現代書林)は、漫画で分かり易く解説されている。