定評あるカーネギーの悩み解消の処方例集・・・【山椒読書論(43)】
私たちは、しばしば絶望感に囚われる。そんなとき、悩みや苦しみを少しでも軽くしてくれる処方例集が身近にあったら、と思うだろう。
『道は開ける』(デイル・カーネギー著、香山晶訳、創元社)の、自分の悩みにぴったり合うページを開けば、悩みの泥沼から脱出する手がかりを得ることができる。
一例を挙げると、人間関係で悩んでいる人には、「1分間でも時間を無駄にしないために、気に入らない人については考えないことにしょう」とアドヴァイスしている。
このほか、「悩みを解決するための魔術的公式」、「悩みの分析と解消法」、「仕事の悩みを半減させる方法」、「心の中から悩みを追い出すには」、「多くの悩みを締め出すには」、「避けられない運命には調子を合わせよう」、「悩みに歯止めをつけよう」、「仕返しは高くつく」、「恩知らずを気にしない方法」、「2週間でうつ病をなおすには」、「非難に傷つかないためには」、「疲労を忘れ、若さを保つ方法」、「不眠症で悩まないために」、「私はどのようにして劣等感から抜け出したか」、「ジョン・D・ロックフェラーはいかにして寿命を45年も延ばしたか」等々、アドヴァイスはあくまで実践的である。実践的だからこそ、処方例集の役割を果たすことができるのだ。
著者は、ロング・セラー『人を動かす』で広く知られている、あのカーネギーである。
いささか横道にそれるが、小林秀雄は、「人は性格に合った事件にしか出くわさない」と言い、芥川龍之介は、「運命は性格のなかにある」と言っている。また、アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは、「人間の哲学が変わる時、あらゆるものが変わる」と述べているが、まさしくそのとおりである。先ず、心が変われば態度が変わる。態度が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば人生が変わる。明るい想念の人は明るい人生を、暗い想念の人は暗い生涯を、刺々しい想念の人は険しい人生行路を自ずから選択することになる。
一度しかない人生なのだから、この際、思い切って、暗い自分にさよならしよう。