松本清張が差別への怒りと哀しみを込めた最高傑作・・・【山椒読書論(237)】
【amazon 『砂の器』 DVD『砂の器』 カスタマーレビュー 2013年7月25日】
山椒読書論(237)
東京の蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見される。被害者の東北訛りと「カメダ」という言葉を手がかりに必死の捜査が行われる。迷宮入りしたこの事件を、老練刑事・今西が、他の事件の捜査の合間を縫って執拗に追う。
やがて、恐るべき真実が姿を現してくる。
松本清張の社会派推理小説はどれも読み応えがあるが、一冊だけと言われたら、この『砂の器』(松本清張著、新潮文庫、上・下巻)を挙げることになるだろう。
『砂の器』には、清張の差別への怒りと哀しみが込められているからだ。
優れた小説の映画化にはがっかりさせられることが多いが、DVD『砂の器』(野村芳太郎監督、丹波哲郎・加藤剛出演、SHOCHIKU)に限っては、この弊を免れているどころか、素晴らしい作品に仕上がっている。親子が流浪する荒涼としたシーンは、私の心の奥に刻み付けられている。映像だけでなく、音楽も圧倒的な力で迫ってくる。清張自身も、生前、この映画は高く評価していたという。