榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ヒットラーにユダヤ人の血が流れていたとは・・・【山椒読書論(568)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年8月3日号】 山椒読書論(568)

アドルフに告ぐ』(手塚治虫著、文春文庫ビジュアル版、全5巻)の第2巻は、日中戦争の描写から始まる。「日本軍は南京、武漢三鎮、徐州、広東と戦域を広げるにつれて、狂気と泥沼の中へ、みずからのめりこんでいった。何千男万もの一般市民も撃たれ、くしざしにされ、ためし斬りにされていった。女子どもでも便衣隊(スパイ)とかゲリラの名のもとに片っぱしから惨殺された」。

国内では――。「『聖戦』という名のもとに、従わない者には『非国民』のレッテルがはられ、疑いをもつ者には仮借なく弾圧の手がのびた。徹底てきな思想や言論の弾圧だった」。そのファシズムに反対する秘密グループに小城という小学校の女教師が参加している。

帰国した峠草平は、ベルリンでナチスに殺された弟・勲が、重要文書を奪われることを恐れて、2年前に小学校時代の恩師・小城に極秘文書を送っていたことを知る。「こいつはね・・・先生・・・勲のやつが・・・命を張って手に入れた極秘文書なんです。この文書は・・・手紙は・・・みんなあることを証明してる。アドルフ・ヒットラーにユダヤ人の血が流れているって証明する文書ですよっ」。

何と、ヒットラーの父方の祖父がユダヤ人だったという証拠物件だったのである。「じゃあ、ヒットラー総統は・・・ユダヤ人の家系ですのね」。「すくなくとも1/4はね!」。「あのヒットラー総統がユダヤ人だなんて・・・だれだって知りませんわね! ユダヤ人と知れるとまずいんやわ」。「そうです!! ヒットラーにとっては、彼の素性はひたかくしにされていて・・・ばれたが最後、破滅なんです」。

小城から極秘文書を預けられた草平は、特高警察から拷問され、通信社を馘になる。そして、何としても文書を取り戻そうとするナチスから執拗に追われることになる。

一方、ドイツのヒットラー・ユーゲントのエリート校、アドルフ・ヒットラー・シューレ(AHSに入学したカウフマンは、ナチス幹部への道を歩み始める。

ヒットラーにユダヤ人の血が流れていたとは!