榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

手塚治虫の作品の中で私が一番好きなのは、『アドルフに告ぐ』だ・・・【山椒読書論(566)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年7月31日号】 山椒読書論(566)

手塚治虫の作品の中で私が一番好きなのは、『アドルフに告ぐ』(手塚治虫著、文春文庫カジュアル版、全5巻)である。

第1巻は、昭和11(1936)年8月、ドイツのベルリンで幕を開ける。

協合通信の記者・峠草平は、ベルリン大学に留学中の弟・勲から、「たいへんな情報なんだ。あるものをにいさんに渡したいんだよ」という電話を受け、勲のアパートに約束の時刻に2時間遅れて着くが、勲は何者かに惨殺されている。

草平の必死の情報捜しが始まるが、杳として行方は分からない。

それどころか、草平はゲシュタポに拉致され、激しい拷問を受ける。

一方、日本のドイツ総領事館員でナチス党員(妻は日本人)の息子、アドルフ・カウフマンと、日本に住むユダヤ系ドイツ人のパン屋の息子、アドルフ・カミルは、小学生で親友同士だが、カミルがユダヤ人ということで、カウフマンの父親は、カミルと付き合うことを厳しく禁ずる。

勲が兄に伝えようとした情報の内容が気になってしかたがない私。