榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ヒットラーの出生に関する極秘文書を、ソ連のスパイ・ゾルゲに渡そうと試みるが・・・ ・・・【山椒読書論(570)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年8月5日号】 山椒読書論(570)

アドルフに告ぐ』(手塚治虫著、文春文庫ビジュアル版、全5巻)の第4巻では、自宅で首吊り自殺した、ファシズムに反対する秘密グループのリーダーの遺書に「君ノ持ツ レイノヒットラー総統出生文書 至急 ラムゼイニ渡セ 平和ノタメ 彼ガ役立テテクレル」と書かれていたラムゼイなる人物が冒頭から登場する。

ラムゼイとは、ソ連のスパイ、リヒァルト・ゾルゲのコード名だったのである。「ラムゼイの目的は、日本がソ連を攻撃するかどうかを探り、たしかめることだった。そして、それをモスクワへ知らせ、ナチスのソ連進攻に対処させることだった」。

神戸のパン屋の息子、アドルフ・カミルと女教師・小城は、ラムゼイ・グループの情報提供者の日本人青年を通じてラムゼイに極秘文書を渡そうと試みるが、実現前に、ラムゼイ・グループは特高に摘発されてしまう。

それから3年後、ドイツのアドルフ・カウフマンは、ナチスの中尉として、ユダヤ人や反政府分子抹殺で点数を上げ、幹部への道を驀進している。しかし、ドイツの国民的英雄・ロンメル将軍を暗殺せよという上官の命令に逆らったため、ユダヤ人輸送担当官に左遷されてしまう。