榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

海外の人たちは、こんなものまで食べているのか・・・【山椒読書論(348)】

【amazon 『世界で一番恐ろしい食べ物』 カスタマーレビュー 2013年12月21日】 山椒読書論(348)

世界で一番恐ろしい食べ物』(ニール・セッチフィールド著、上原直子訳、エクスナレッジ)には、目を背けたくなるような写真が多数掲載されている。

「人類は誕生してこのかた、ありとあらゆる動物・植物の、あらゆる部位をむさぼり食ってきた。食べて死なない限り、手に入るすべてのものを! しかし、ある場所では何の違和感もない料理が、別の場所では不快きわまりない一品になる。ある個人や民族がまずい(オエッ!)と思ったものを、別の個人や民族は美味しい(うまい!)と感じる。本書では、そうした嗜好の違いを、細部まで鮮やかに映し出した写真とともに探求していきたい」。その成果が、この写真集に凝縮しているのだ。

例えば、「黒サソリの串刺し」の写真には、「ある一定量のサソリたちは、食材として中国やベトナムの市場で売られる運命にある。外はカリカリ、中はしっとりの黒サソリを食べれば、きっと忘れられない経験になるだろう。毒針部分を最初に取り除くかどうかは、個人の好み。そして勇気しだいだ」という説明が添えられている。

「ムカデの串刺し」「サソリ酒」「タランチュラ」「ウミヘビの串刺し」「タツノオトシゴの串刺し」「イヌ」「ヤギの睾丸」「ヤギの頭」「テンジクネズミ」「ブタの脳みそ」「ブタの顔」「ブタの鼻」「ネズミ」「ヒツジの頭」「ワニジャーキー」「ヘビの串刺し」「ニワトリのトサカ」などの写真は、いずれも迫力がある。そして、ものによっては、ご丁寧に、「おすすめレシピ」まで付記されている。

ウェールズ出身のイギリス人の著者は、私たち日本人にはお馴染の、そして私の大好物である「アワビ」「タラの精巣」「ミルガイ」「クラゲ」「タコ」「エイ」「ナマコ」「ホヤ」「ウニ」「海苔」「イカ」「ツブガイ」「ニワトリの砂肝」「スズメの丸揚げ」「納豆」なども取り上げている。「海苔」は、このように説明されている。「多くの欧米人にとっては、黒い紙、もしくは海を漂う汚物を口の中に入れるなんで、狂気の沙汰なのだ」。「納豆」の場合は、「ネバネバヌルヌルして異臭を放ち、不快な後味を残す納豆」といった具合である。

「本書に掲載した食べ物の写真へのリアクションを左右するのは、その人の育った場所や環境ということになるのだろう。ある写真を見て昼ごはんに思いをめぐらす人もいれば、軽い吐き気をもよおす人もいるかもしれない。偏見を捨て、自分と異なる文化に暮らす人たちにとって何が美味しい食事であり、何が単なる栄養摂取もしくは生きるための手段なのかを、いま一度よく考えてみてほしい」という著者の言葉の意味を、深く考えさせられる写真集である。