35年連れ添った夫が亡くなる5日前に漏らした「ありがとう小鴨さん」という譫言・・・【山椒読書論(525)】
【amazon 『黄昏流星群(13)』 カスタマーレビュー 2020年1月17日】
山椒読書論(525)
コミックス『黄昏流星群(13)――六芒星奇譚』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「京都星宿」は、35年連れ添った夫が亡くなる5日前に漏らした「ありがとう小鴨さん」という譫言(うわごと)の意味を知りたいと、残された妻が思い詰める場面から始まる。「(石部金吉を絵に描いたような夫の)夢の中に出て来て、しかも『ありがとう』と言わせる女・・・確かめたい・・・」。
桧垣光子は、気晴らしにと息子から「都をどり」見学を勧められ、20年ぶりに京都を訪れる。
「ひょっとしたら、小鴨って女は、花街の人間? 確かに夫は、20年くらい前に(単身赴任で)3年間京都で一人暮らしだった」。
夫のかつての部下で定年後、暇を持て余している京都在住の迫田健介が、小鴨捜しを手伝ってくれることになった。
夫の行きつけだったおばんざいの店の女将から、思いがけないことを聞かされる。「桧垣はん、小鴨はんに子供残して、東京に戻りはったんで、心配でしたんやろな。それで、1~2年に一度、京都に来てはりましたわ」。
捜し当てた小鴨から、夫とのことを全て告白される。その後、妙なことに、二人の女の間に心の通い合いが生じる。「何だか不思議な友情すら芽ばえてくる」。「私は、決して夫を嫌いではなかったが・・・。私以上に夫を愛していた女性が出現したことによって、心の負担がなくなったことは事実だ」。
「どうぞ、この遺骨を半分お持ち下さい。大造もそれを望んでいると思います・・・。ね、あなた、いいでしょ」。「う、う・・・」。「この時、私は、新しい恋に向かって歩きはじめた」。その新しい恋の相手は・・・。