年金生活の老人の家に派遣されてきた家政婦は、実は、大会社の会長夫人だった・・・【山椒読書論(528)】
【amazon 『黄昏流星群(6)』 カスタマーレビュー 2020年1月20日】
山椒読書論(528)
コミックス『黄昏流星群(6)――汝が星は永遠に煌く』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「汝が星は永遠に煌く」は、永続する愛の物語である。
年金生活を送る寺嶋は、同い年の妻が入院して2年目のため、一人暮らしを余儀なくされている。「75歳になっての突然の一人暮らしは骨身にこたえた。ガスレンジのつけ方も知らなかった私にとって、何もかもが初めての経験だった」。
そこで、高齢者の人材センターに家事手伝いの人を依頼する。翌日、派遣されてきたのは新庄テイ子という60歳代の女性であった。この女性が大変な働き物で、家中が見違えるように整理整頓されていくではないか。
「いくらヒマだからといっても、私に親切すぎる。妻の言うように何か企んでいるのだろうか? そんなことを想像する自分も嫌だが、あまりにも不自然だ」。「彼女は私のことが好きなのか・・・? いや、そんな筈はない。私はカネもない、力もない、ただのひからびたジジイだ。しかし、それでは(洗濯中に)私の肌着に顔をおしあてていたのは、どういうことなんだ? しかも、とてもいとおしそうに匂いを嗅いでいたではないか」。
「何だか、あれこれ想像を働かせているうちに、だんだん彼女が好きになってきた」。
「彼女がどこに住んでいるのか知りたくなった」。後を付けた結果、都内でも屈指の高級住宅街の豪邸の夫人だと判明する。「一体どうなっているんだ!? シルバー人材センターから派遣された家政婦さんは、豪邸住まいの奥様だったなんて・・・」。
実は、彼女には、誰にも明かしたことのない秘密があったのである。
その真実を知った時、思わず涙ぐんでしまった私。