榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

若年性アルツハイマーを発症した妻を持つ65歳の男と、亡兄の愛人の物語・・・【山椒読書論(535)】

【amazon 『黄昏流星群(535)』 カスタマーレビュー 2020年1月27日】 山椒読書論(535)

コミックス『黄昏流星群(46)――白色矮星のあなた』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「白色矮星のあなた」は、若年性アルツハイマーを発症した妻を持つ男と、亡兄の愛人の物語である。

「妻に『異変』が起きたのは5年前、ちょうど私が定年退職をした年だった」。

葛城邦彦、65歳の一人暮らしのマンションに電話がかかってきた。「私、初めてお電話致しますが・・・葛城辰彦さんと一緒に暮らしている村上由美と申します」。「兄貴の愛人だ!! もう25年も前に義姉を置いて家を出た兄貴の愛人だ」。「実は・・・辰彦さんが本日夕方、亡くなりました」。

「私の目の前に座っているこの人が・・・先日死んだ兄貴の愛人。想像していた人物像から大きくかけ離れた人だった・・・。兄貴が25年前、家庭を捨ててまで走ったその相手は、傾国の美女ではなくて、今は目立たない普通のオバさん。何故この人をそこまで好きになったのか、すごく興味がわいてきた」。

何度か会ううちに、「私はこの時点で村上由美という女性に完全に心を奪われていた」。

「もう止められない。まだ妻のある身で、兄が死んでしまったとはいえ、兄の愛人と深い仲になるなんて許されることなのか。凡百の不安が頭をよぎったが、もう止められない」。

兄の遺品の中から、「青島(チンタオ)軍事」という第一次世界大戦中の使用済切手が30枚、未使用切手が10枚も出てきたから、さあ大変! 切手商によれば、「『青島軍事』は現在10枚ぐらいしか発見されていなくて、収集家の間では値段がつけられないくらい貴重なものです。このカタログでは使用済が75万円と書いてありますが、100万円だって買う人はたくさんいます」。因みに、カタログには、未使用は160万円と記されている。

妻と由美の間で、邦彦が選択した道は・・・。