サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?・・・【山椒読書論(595)】
小学校の高学年になってもサンタクロースの存在を信じ込んでいた私は、サンタクロースなんていないぜという同級生と大声で言い争ったことがある。この問題に、『サンタクロースっているんでしょうか?――子どもの質問にこたえて』(中村妙子訳、東逸子絵、偕成社)は、どう答えているのだろうか。
「サンタクロースって、いるんでしょうか? そんなしつもんに、ぴたりとこたえた人がいます。いまから80年ほどまえのアメリカのニューヨーク・サンというしんぶんにでた社説です。この本は、その社説を訳したものです。さあ、サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?」。
「1897年9月21日 ニューヨーク・サン新聞『社説』 ニューヨーク・サンしんぶんしゃに、このたび、つぎのような手紙がとどきました。さっそく、社説でとりあげて、おへんじしたいとおもいます。この手紙のさしだし人が、こんなにたいせつなしつもんをするほど、わたしたちを信頼してくださったことを、記者いちどう、たいへんうれしくおもっております」。
「きしゃさま あたしは、8つです。あたしの友だちに、『サンタクロースなんていないんだ』っていっている子がいます。パパにきいてみたら、『サンしんぶんに、といあわせてごらん。しんぶんしゃで、サンタクロースがいるというなら、そりゃもう、たしかにいるんだろうよ』と、いいました。ですから、おねがいです。おしえてください。サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか? バージニア・オハンロン ニューヨーク市 西95番街115番地」。
「バージニア、おこたえします。サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友だちは、まちがっています。きっと、その子の心には、いまはやりの、なんでもうたがってかかる、うたぐりやこんじょうというものが、しみこんでいるのでしょう。うたぐりやは、目にみえるものしか信じません。うたぐりやは、心のせまい人たちです。心がせまいために、よくわからないことが、たくさんあるのです。それなのに、じぶんのわからないことは、みんなうそだときめているのです。けれども、人間の心というものは、おとなのばあいでも、子どものばあいでも、もともとたいそうちっぽけなものなんですよ」と、続いていく。
そして、「サンタクロースがいない、ですって? とんでもない! うれしいことに、サンタクロースはちゃんといます。それどころか、いつまでもしなないでしょう。1千年のちまでも、100万年のちまでも、サンタクロースは、子どもたちの心を、いまとかわらず、よろこばせてくれることでしょう」と結ばれている。
当時、この社説を知っていたら、同級生にもっと上手に反論できたのに!