赤ん坊を産んだ妻のために、火をもらいにいった男の物語・・・【山椒読書論(631)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月15日号】
山椒読書論(631)
絵本『聖なる夜』(セルマ・ラーゲルレーヴ文、イロン・ヴィークランド絵、うらたあつこ訳、ラトルズ)は、火をもらいにいった男の物語です。
「――むかし、ひとりの男の人がいました。男の人はある暗い夜、火をもらいに外へでていきました。家から家へとたずね歩き、ドアをたたいて、『おねがいです、火を少し分けてください。妻が、あかんぼうをうみました。火をおこして、あたためてやらなければなりません』といいました。けれども、真夜中だったのでみんなねむっていて、だれひとり答えてくれませんでした、男の人は、先へ先へと歩いていきました。すると、はるか遠くに赤い火が見えたので、男の人は、火にむかっていそぎました」。
苦労の末に火を持ち帰る男の後をつけた「羊飼いが目にしたのは、人がすむような家ではありませんでした。あかんぼうと母親は岩山のほら穴の中で、むきだしのつめたい石にかこまれてねていたのです」。
クリスマスの日の不思議な出来事が展開されていきます。