シャーロック・ホームズ作品の登場人物たちの特徴を捉えた絵が、何とも魅力的!・・・【山椒読書論(781)】
【読書クラブ 本好きですか? 2023年4月30日号】
山椒読書論(781)
『シャーロック・ホームズ 人物解剖図鑑』(えのころ工房 絵と文、エクスナレッジ)の魅力は、シャーロック・ホームズ作品の登場人物たちの特徴を捉えた絵と、その詳細な人物紹介である。
「本署では、正典(原作小説)に登場する人物たちに焦点をあて、正典に書かれている描写に出来るだけ忠実に、時には映像化作品などの力を借りつつ、独自の解釈を加えながらヴィジュアル化することを試みました」。この著者の試みは見事に成功していて、その作品の世界にぐいぐいと引きずり込まれてしまう。
「また、本書では『ホームズ』の『基本』が分かる本にしたいと考え、物語のあらすじや注目ポイントなども取り上げてみました。そして事件の核心部分が『ネタバレ無し』を前提に、日付や曜日など正典内の矛盾がある点もそのまま載せ『正典に書いてあることをおさらいできる本』を目指しています」。この目論見もちゃんと叶えられている。
シャーロック・ホームズの人物紹介の一項目「精力と無気力」には、興味深いことが記されている。「事件や研究の時は、寝食も忘れて精力的に活動。事件が終わると、その反動からか数日ほど無気力状態に」。
ジョン・H・ワトスンの「読書趣味」は、こう記されている。「推理小説でのお気に入りの探偵は、(エドガー・アラン・ポーの)デュパンと(エミール・ガボリオーの)ルコック。『オレンジの種五つ』では海洋冒険小説に夢中になるなど、専門書を読むホームズに比べ、ワトスンの読書は娯楽小説が目立つ」。
長篇『緋色の研究』、『四つの署名』、短篇集『シャーロック・ホームズの冒険』の『ボヘミアの醜聞』、『赤毛組合』、『まだらの紐』を、久しぶりに再読したくなった。