榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

離婚危機にある夫婦にお薦めの一作・・・【山椒読書論(783)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年5月2日号】 山椒読書論(783)

『人生は回転木馬――オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション』(オー・ヘンリー著、千葉茂樹訳、和田誠絵、理論社)に収められている『人生は回転木馬』は、今、まさに離婚しようとしている夫婦を巡る、いかにもオー・ヘンリーらしい作品である。

治安判事ベナジャ・ウィダップの前で――。「『もう、これ以上はやっていけないってことになりましてね。おたがいがいたわりあってるうちだって、山のなかで暮らすのはさみしいもんだ。ところが、いまじゃあ、この女、山猫みたいにうるさくわめきたてたかと思えば、フクロウみたいにむっつり黙りこむ。せまい小屋でそんなことされた日にゃあ、もうこれ以上、いっしょにいるのはうんざりだ』。『この人はダニみたいな男で、やさしいところだってちっともない』。女房は淡々といった。『与太者だの、密造酒作りの連中だのといっしょにほっつき歩くかと思えば、酒をかっくらってだらだら寝ころがってる。あげくのはてに、やっかいななかまが腹をすかせた犬どもをつれてきては、えさを食わせろっていうんですよ』」。

すったもんだの末に、意外な結末が訪れる。離婚危機にある夫婦にお薦めの一作だ。