榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

シルバー世代を対象にした出会い系マッチングサイトを通じて知り合った男女の物語・・・【山椒読書論(799)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年7月9日号】 山椒読書論(799)

コミックス『黄昏流星群(69)――連星哀歌』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「偽りの放れ星」は、シルバー世代を対象にした出会い系マッチングサイトを通じて知り合った男女の物語である。

齋藤元は、「私はジュピターです。55歳で某上場企業の重役をやってます。家族は福岡にいますが、私は東京都心のマンションに単身で住んでいます。趣味はスキー。大学時代はインターカレッジで優勝したこともあります。マンションの一人暮らしは退屈です。どなたか話し相手になっていただけたら嬉しいです。私のアドレスは・・・」と、サイトに登録する。

渡邊志保がジュピターにアクセスしてくる。「初めまして 『私はピアノ』です。ご家族と離れて東京でお仕事をしておられるなんて素敵です。 どんなお仕事ですか?  あと、スキーがお上手とのことですが、私は一度もしたことがありません。 大学時代は音大のピアノ科で、練習練習の明け暮れでした」。

「初めまして、『ジュピター』です。アクセスしてくれてありがとうございます。 私の会社はアパレル関係の輸入をやっています。差し支えなかったら『私はピアノ』さんのお仕事を教えてもらえませんか?」。

「私は千葉の女子大の保育学科でピアノの講師をやっております。 保育士になる生徒さんのために簡単なピアノを教えています」。

「それは素晴らしいお仕事ですね。ところでご家族はいらっしゃるのですか?」。

「いえ、独身です。45歳です。この年になるまで一度も結婚したことはありません」。

このようなやり取りを経て、迷った末に、二人は会う約束をする。「ドキドキする」。

互いに好感を抱いた二人はラブホテルに入る。

逢瀬を重ねるが、齋藤は、遂に決意する。「大会社の重役どころか、今は61歳で無職のしょぼくれたオヤジだ。見栄をはって毎回高価なレストランで食事をするのも難しくなってきた。潮時かな。これまでウソをついていたことを謝って、別れることにしょう」。

高級レストランでディナーを終え、齋藤の正直な告白を聞いた渡邊は――。「実は私もウソをついていました。音楽大学のピアノ科卒業も、千葉の女子大の保育科のピアノ講師をしているというのも全部ウソッぱちです。45歳というのもウソです。本当は52歳のラブホの従業員です。あと・・・私は高校を中退してビニ本のヌードモデルをしていました。10台20代はとても乱れた人生で、人様にお話し出来ないような生活をしていました」。

その後の、二人は・・・。