辞書たちと後期高齢者――文章の達人に憧れる・・・【山椒読書論(795)】
『文章のみがき方』(辰濃和男著、岩波新書)のおかげで、後期高齢者ながら文章力を磨くヒントを7つも得ることができた。
●書き抜く
「①書き抜くことで、その著者からより深く学ぶことができる。②自分の文章の劣った点、たとえば、紋切型を使いすぎるといったことを学ぶことができる。③自分がどういう文章を『いい文章』だと思ってきたのか。のちに、自分の心の歴史をたどることができる」。
●小さな発見を重ねる
「才能にあふれたシナリオライター(=向田邦子)は、日々、心のポケットに、その日の『小さな発見』をしまいこみ、それらを大切に貯めていたのでしょう。生活の瑣事に強い好奇心をもち、瑣事のなかに人生の宝物を見つけることの天才でした。その底にあるのは、本質を見る目の深さです」。
●辞書を手もとにおく
「①いつもかたわらに辞書を置き、こまめにひく習慣をつくる。②辞書で言葉調べのたのしさを味わう。③新聞社がだしている『用語の手引』や、そのほかの『類語辞典』『逆引き辞典』などたくさんの種類の辞書をおおいに活用する」。
●異質なものを結びつける
「散文の世界でも、私たちは、異質のものを結びつけることで新しい次元に飛ぶことができます。Aについて書きたい。しかし、Aのことだけを書くのでは、話が単調になります。Aとはかなり異なる分野のXの話をもってきて、うまくAとXとを結びつける。うまく結びつけば、成功です」。
●感受性を深める
「外界の刺激を受けてみがかれた感覚は、やがて清冽な言葉となって湧きだします。ゆたかな感受性こそが、清冽な言葉を生む源なのです」。
●動詞を中心にすえる
「動詞がいかに文章に躍動感を与えるか。・・・動詞は、海辺の光景を具体化し、動きのあるもの、身近なものにしてくれます。動詞という品詞はなんと頼もしいやつか、ということをこの(村山由佳の)文章は改めて教えてくれます」。
●渾身の力で取り組む
「渾身の気合で書く。そして、肩の力を抜いて書く。この二つをどう融合させるか。矛盾するようで、これは決して矛盾するものではありません」。
早速、「異質なものを結びつける」と「動詞を中心にすえる」という教えに従い、この文章の題を考えてみたが、出来は今一つだな。