榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大嫌いな奴がいる場合の対処法・・・【情熱的読書人間のないしょ話(150)】

【amazon 『大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル』 2015年8月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(150)

散策中に出会う農家の人との会話は、散策の愉しみの一つです。サトイモ畑で手入れ中の年輩の女性に、収穫時期を尋ねたところ、笑顔で、「10月末だね。その頃、買いに来てよ。サービスするから』と言われてしまいました(笑)。

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閑話休題、昨今のいじめに関する放送や記事に接すると、いじめる側の人間に対する怒りを感じるとともに、いじめられる側の人間に、「死んだりするな! 辛い時期がいつまでも続くと考えるな」と言ってやりたくなります。学生時代にいじめを見聞きしたことのない私には、どうしてこのようにいじめが多発するのか、もう一つ理解できないのです。

高校時代に始まり、社会人になっても、いじめられた経験を持つ著者の手になる、中高生向けの『大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル』(豊島ミホ著、岩波ジュニア新書)には、具体的なアドヴァイスが書かれているのだろうという期待を持って、読んでみました。

「今やっと教育現場で呼称が定着しつつある『スクールカースト』というものが、その時(著者が高校2年の1998年)にはもう存在していました。逆に言うと、当時は、その教室の状況を説明する言葉は存在しなかった、ということです。教室の中は、おおまかにはまっぷたつに分かれていました。自分の好きなように振る舞ってもいい『上』の子たちと、それが許されない『下』の子たち。どちらの層に属するか、決まる根拠はありません。ただ、そういう『空気』なのです。しいて言うなれば、顔立ちがきれいで、制服の着方や髪型がおしゃれな、垢抜けた子ほど『上』である、権力がある、というのが基本。そこから離れるほど『下』になっていきます」。

自分の高校時代を、著者がこのようにまとめています。「●私は、高校2年の時にスクールカーストの底辺に置かれ、いじめというほどではないが適当に見下された学校生活を送っていた。●その状況を気にしすぎて身体に症状が出るようになり、保健室登校を始めた。●親と、問題に直接関係する教師は、それを責めもしないが支持もしなかった。温かく接してくれる友人や教師もいた。●私に要求されたことは、『自分側』が変わることだった」。

社会人になって10年目に、著者は「ルールの書き換え」を決断します。「私はこれから、ふたつのことを守って生きていこうと決めました。ひとつは、『誰かのルール』に乗っからないこと。認められるとか認められないとか、そういうことに自分の行動の基礎を置かないこと。・・・それからもうひとつは、自分がやりたいことを素直に、それからもう少し根気強くやること」。「『誰かに嫌われたら、だめ』なわけではありません」。

リベンジについて。「今がつらくて、不当に傷つけられていて、傷つけてくる人たちのことが憎い。復習したい。もしあなたがそういう状態であるとしても、私に言えることは、大してありません。ケースはそれぞれだから、対策なんてもっとわかりません。でも絶対にここを目指して欲しい、というのは『好きなことをして好きな人と付き合える場所』です」。

いじめに遭っている若者へのアドヴァイス。「仕事を始め、少しずつ人に関わるようになって知ったことは、『学校』(小学校、中学校、高校)がいかに閉じた世間だったか、ということでした。・・・学校というのは、実はかなり特殊な世間でしかなく、実は大人の『社会』と同等の場所ではありません。・・・(大人の社会は)あなたが個性を発揮すればするほど=好きなことをすればするほどいい環境に行ける。もし学校が最低の環境だと思うなら、それはあなたに合わない最低の環境、で間違いはないんです。『ずっとこういう場所で、こんな場所で耐えていかないといけないんだ・・・』という絶望は、全然しなくていいんですよ!」。

現時点の著者の「ヤなやつ」対策のポイントは、この4つです。「①自分にとって有害なやつは『自分にとって有害なやつ』以上でも以下でもないと考える。②なぜ害されたか、心の中で分析しそうになったら止める、③悲しければ泣く。つらいと言える相手がいたら言う。④相手(の性格や考え)を変えようと思わない。相手と自分との接点だけを切る」。