榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

93歳の妻が、27歳で戦場に散った夫に送り続ける恋文・・・【情熱的読書人間のないしょ話(196)】

【amazon 『70年目の恋文』 カスタマーレビュー 2015年10月14日】 情熱的読書人間のないしょ話(196)

散策中に、ざらついた赤い実を付けたイチゴノキ、鮮やかな赤い小粒の実がびっしりのナンテン、熟して裂けたザクロの実、紫色に熟したムベの実、黄色く色づいたミカン、葉を落とし実をたわわに実らせたカキの木を見つけました。秋の深まりを感じます。因みに、本日の歩数は10,564でした。

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閑話休題、『70年目の恋文』(大櫛ツチヱ著、悟空出版)には、涙が止まりませんでした。

93歳の妻が、27歳で戦場に散った夫への恋文を毎日、書き続けているのです。感謝の気持ちと今の幸せを夫に伝えたいと、語りかけているのです。

「貴方!! 今日は十月十日、結婚記念日です。貴方の優しく凛々しい姿、結婚当初の事が昨日の事のように思い出されます。・・・一夜明けただけなのに、貴方の寝顔をしばし見つめて貴方の妻になった実感を噛みしめました。貴方を夫と決めて下さった運命の神様に感謝しています、貴方に会いたい、会いたい!」。

「貴方!! 貴方!! 貴方!! 何回も呼んでみたいのです。貴方と呼ぶと貴方と過ごした一年二ヵ月の新婚時代に戻るのです。貴方のぬくもりが蘇ってきます。有難う! 有難う!」。

「貴方!! 裏の桜が満開になりました。練塀町にいた時、大濠公園の夜桜を見に行った貴方とのデート。体中が貴方の気で熱くなっていました。恋しくて恋しくて 目をつぶれば今に蘇り、貴方の手の温もりが伝わってきます。桜の花を見ながら貴方を偲んでいます。夢に出てきて下さい、貴方!!」。

「休みの日の午後、部屋の窓辺で貴方の肩に凭れて過ごした時間・・・。いま、貴方の優しい眼差しに見守られているような幸せを感じています」。

「お別れの朝、霧の中に遠ざかる貴方を見送ったのが最後になってしまいましたね。きっと還ってきてくれると信じていたのに、貴方は遠い太平洋の島のジャングルの中に独りで・・・。胸が痛みます。でも、待っていて下さい。貴方への愛を何倍にもしてお返ししますから」。

「暑い暑いジャングルに眠っている貴方を想うと胸が痛むけど、今はきっと私の傍に帰ってきてくれていますよね。貴方!! 貴方の温もりをすぐ傍に感じます」。

「貴方!! 今日は終戦記念日。六十九年前の今日、戦争は終わりました。貴方が還ってくると、お帰りを待つ喜びに変わりました。それから、今日か明日かと、お帰りを待っていたのに、届いたのは貴方の戦病死の報でした。貴方は遥か遠く、独りで逝ってしまった。どんな気持ちで最期を迎えられたのか・・・。貴方の傍に飛んでいって手を握り、体をさすってあげたかった。貴方の最期を思い、二人の子を腕の中で抱きしめ、どんなに悲しみに沈んだ事か・・・、昨日の事のように思い出されます」。

「貴方!! 貴方!! 貴方!! 何度も呼んでみたい貴方!! 胸がキューンと熱くなり、涙が滲みます。会いたい!! 貴方の腕の中に飛び込んで、抱きしめられたい!! そんな想いで胸がいっぱいになります。貴方の息吹が伝わってきます。いま私の傍に来て下さっているのですね。いっぱいの幸福を有難う」。

「貴方の妻となって本当に幸福です。貴方の許へ行く時は昔に還って新妻になって行きますから待ってて下さい。恋しい貴方!! お休みなさい」。

我が国を戦争ができる国にしようとしている人たちに、無理やりでも読ませたい恋文集です。