榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

北斎の春画は強烈だが、その詞書も凄いぞ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(300)】

【amazon 『北斎春画かたり』 カスタマーレビュー 2016年2月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(300)

我が家の庭の餌台にやって来るヒヨドリをじっくり観察していると、本を読む時間が少なくなってしまいます(涙)。日本ではありふれた野鳥ですが、海外のバード・ウォッチャーには珍鳥として人気が高いようです。

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閑話休題、『超釈 北斎春画かたり――喜能会之故真通より』(車浮代著、小学館)に掲載されている春画はいずれも強烈です。春画だけでなく、著者が葛飾北斎の代表作『喜能会之故真通(きのえのこまつ)』の各絵の背後に書き込まれている詞書(ことばがき。登場人物のセリフとト書き)を超釈した現代語訳も負けず劣らずインパクトがあります。

よく知られている巨大な蛸と若く美しい海女が妖しく絡まり合う「蛸と海女」の図の話は、このようです。「『いつかはいつかはと狙い澄ましていた甲斐があって、今日という今日はとうとう捕まえたア』。奇妙な声が聞こえ、気がついた。・・・めまいがして頭が痛い。瞼が重くて目が開けられない。いったい誰の声だろう? 甲高くてひび割れた、水の中で聞くような声・・・。『ひっ・・・』。全身が総毛立った。ぬめっとした手が何本も、一斉にあたしの身体を這い回った。・・・『ヒイッ・・・』。恐怖のあまり息が詰まった。巨大な蛸が、足の間からあたしの顔を覗き込んでいた。紅殻色の大きな顔に、ぼっこりと飛び出した、どこを見ているのかわからない半月型の目玉。・・・」。目をつぶっても、恍惚とした海女の顔がいつまでも消えず、困ります。

「江戸期の人々にとって、男女和合は子孫繁栄につながる目出度い行為であり、春画は『勝ち絵』とも呼ばれ、お守りや厄除けの役目も果たしました。現代人の性に対する認識と倫理観で、江戸の春画を単純に位置づけることはできないのです。また技術面で言えば、幕府による禁令をかいくぐって秘密裏に売買された春画版画には、規制を無視した贅沢な彫摺が施されました。それだけに、絵師・彫師・摺師といった職人たちは、版元から春画を依頼されてこそ一流の証とみなされました。つまり春画は、浮世絵芸術の最高峰に位置し、春画を観ずして浮世絵版画の本当の凄さは語れませんし、江戸文化の本当の姿を理解することはできません」。

本当に、北斎の春画の迫力は圧倒的です。