教皇フランシスコとは、いかなる人物なのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(354)】
ヒラドツツジの大輪の淡桃色の花が咲き始めています。大輪の濃い赤紫色のオオムラサキも負けじと花を付けています。淡紫色の地に黄色が特徴的なシャガの花は、清楚な貴婦人といった雰囲気を漂わせています。オオアラセイトウ(ショカツサイ)の紫色の花が目に鮮やかです。濃紫色のボタンも咲き始めています。因みに、本日の歩数は10,645でした。
閑話休題、私は無宗教ですが、現在のローマ教皇がどんな人物なのかには興味があります。この意味で、『教皇フランシスコの挑戦――闇から光へ』(ポール・バレリー著、南條俊二訳、春秋社)は、私の知的好奇心を満足させてくれました。
1936年生まれでアルゼンチン出身のホルヘ・マリオ・ベルゴリオが、全世界のカトリック教会と12億人の信徒を率いる第266代教皇フランシスコとなったのは、2013年のことです。アメリカ大陸出身初の教皇、南半球出身初の教皇、イエズス会士初の教皇、そしてフランシスコを名乗る初の教皇――ということから、彼は異例ずくめの教皇と言われています。
著者は、さまざまな資料や証言を分析して、教皇フランシスコの特徴をこのようにまとめています。「ベルゴリオは神学的には伝統主義者だが、教会のあり方については改革支持者だ。急進主義者だが、自由主義者ではない。ほかの人に権限を与えようと努めるが、権威主義の痕跡も残している。保守的だが、彼の母国の反動的な司教会議の中では、はるかに左の立場にいた。宗教的な単純さと政治的な狡猾さを併せ持っており、進歩的で開放的だが、飾り気がなく、厳しい」。
著者は、積極的に教会改革に取り組み、スラムや貧しい人々に目を向ける教皇フランシスコの改革者としての働きに大きな期待を寄せていますが、彼の若き日の過ちには批判的です。過ちとは、ベルゴリオが36歳で就任したイエズス会アルゼンチン管区長時代に、「解放の神学」(最も貧しい人々の霊的向上と物質的な向上を共に実現しようとするカトリック改革運動)の闘士であった年上の部下、ヨリオ司祭とヤリクス司祭を教会から放逐し、軍事独裁政権の手に委ねた事件を指しています。かつて、ヨリオはベルゴリオの神学の、ヤリクスは哲学の師だったのです。
しかし、彼は「解放の神学」の批判者から、貧しい人々に奉仕する教皇へと脱皮します。「私たちのベルゴリオの生き様の探求によって明らかになったのは、過ちを犯した人物が、自らを変えようとする困難な時期を経て自身の弱さを認識し、時間をかけた祈りを通して、その弱さをコントロールする方策を作り出した、ということだった。神の許しと慈悲を強く心に受けて、彼は、自身の過去の過ちをこれからの人生で償おうと決意した。それが彼を優しく、強くした。自分の職務に対して謙虚で、しかも強靭になった」。
世界に与える教皇の影響力の大きさを考えるとき、本書は、宗教という領域を超えて、広く読まれるべき一冊と言えましょう。