榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

絶望の言葉が満ち溢れているユニークな本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(445)】

【amazon 『絶望手帖』 カスタマーレビュー 2016年7月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(445)

千葉・流山の「杜のアトリエ黎明」で開催されている松尾次郎写真展を見てきました。「春暁の舞(枝垂紅彼岸桜)」と「庭の灯(ケマンソウ)」という作品から強い刺激を受けました。

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閑話休題、『絶望手帖』(家入一真発案、絶望名言委員会編集、青幻舎)には、人間関係、仕事、恋愛、空虚、幸福、社会、業(ごう)、人生に関する絶望の言葉が満ち溢れています。この世に名言集は数多ありますが、絶望の言葉に特化したものはそうそうありません。この意味で、じっくり味わいたい一冊です。

「私たちは、子どもの頃から『夢』や『希望』の大切さを繰り返し教えられてきました。・・・しかし、私たちは常に前向きでいられる生き物ではありません。思うようにならない人生、自分の存在の小ささに、ときにはひどく落ち込み、生きる気力さえ失いそうになることもあるでしょう。『それでいいんじゃないか?』というのが、本書に込めたメッセージです。・・・もちろん、絶望はつらいものです。しかし、まやかしの希望は、ときに絶望以上に人間を傷つけるもの。絶望を乗り越え、あるいは受け入れ、たくましく生き抜くためにも、私たちはもう少し、絶望の意味を考えてみてもいいのではないでしょうか」。

●誰にでも苦手な人はいるものです。妻と2人暮らしのわたしにも、家に苦手な相手が1人います。職場には100人ほどいます(土屋賢二、哲学者、エッセイ)。

●未熟な恋愛で一番つらいのは、自分がまったくの勘違いをしていたことに気づき、作り上げた結晶をみずから砕かないといけない瞬間だ(スタンダール、作家、『恋愛論』)。

●「世の中に酷くないことってないでしょ? 生まれた時から、死ぬのが決まっているというのがすでに酷いんだから(伊坂幸太郎、作家、『グラスホッパー』)。

●幾千人もの天才が、才能を見出されぬまま死んでゆく。自分を知らず、人にも認められず(マーク・トウェイン、作家、関連文献)。

●逃げ回ること風の如く 引き篭もること林の如く 他人を批判すること火の如く たまの外出は陰の如く 働かざること山の如く 親子いがみ合うこと雷(いかずち)の如し(勝山実、ひきこもり名人、『安心ひきこもりライフ』)。

●ネットには、幸せな人しか入れない国がある(もち子、営業職、編集部取材)。

●人はよく「本当に価値あるものはお金では買えない」と言う。そうした決まり文句は、その人がお金に困ったことがない証だ(ギッシング、作家、『ヘンリ・ライクロフトの私記』)。

●あらゆる不幸や苦痛に際して、いちばんの慰めは、自分よりもっと不幸な人たちを見ることである(ショーペンハウエル、哲学者、『この世の苦しみについて』)。

●この国を動かしている人たちの多くは、無自覚な「恵まれた人たち」であることはどうしようもない事実だろう(雨宮処凛、作家・活動家、『命が踏みにじられる国で、声を上げ続けるということ』)。

●愛国心とは、ならず者が最後にたどりつく避難場所である(サミュエル・ジョンソン、詩人・批評家、『格言集』)。

●戦争は冒険ではありません。それは病気です。チフスのような伝染病なのです(サン=テグジュペリ、作家・飛行士、『戦う操縦士』)。

●戦争は戦争のために戦われるのでありまして、平和のための戦争などとはかつて一回もあったことはありません(内村鑑三、思想家・作家、関連文献)。

●「外部評価が非常に低く、自己評価が異常に高い人間」のことを私たちの社会では一般に「バカ」と呼ぶ(内田樹、思想家、ブログ)。

●100年後には、今いる全員死んでいる(tomtom、ヨガインストラクター、編集部取材)。

●人類が最後にかかる、一番重い病気は「希望」という病気である(寺山修司、詩人・劇作家、『あゝ、荒野』)。

このように抜き出してみると、「絶望」と「ユーモア」は双子なのではないかと思えてきました。