榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

生きづらさを感じている人のための本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(574)】

【amazon 『生きづらい世を生き抜く作法』 カスタマーレビュー 2016年10月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(574)

長野・軽井沢の雲場池と旧軽井沢では、全身が紅葉で染まりそうでした。因みに、本日の歩数は18,707でした。

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閑話休題、『生きづらい世を生き抜く作法』(雨宮処凛著、あけび書房)は、長年に亘り、ずーっと生きづらさを抱えてきた著者が綴ったエッセイ集です。

著者の言葉には、しばしばはっとさせられます。

脱原発について。「原発という問題は、あらゆる側面から私たちに『矛盾』をつきつける。必ず『被曝』に晒される労働者を必要とする面。ひとたび事故が起きれば、周辺住民の生活を根こそぎ破壊するという、必ず『犠牲』を必要とするシステムであるという点。日本の原発に使うウランを掘り出すところから海外の人の被曝労働が始まっているという点。そして廃棄物が劣化ウラン弾という恐ろしい兵器に転用されるという点。他にも数え上げればキリがないが、私は1999年と2003年、その劣化ウラン弾が降り注いだイラクに行っている。そこで見た光景は、きっと生涯忘れることはないだろう。癌や白血病に冒され、死んでいく子どもたち、先天性異常で生まれた赤ちゃん、顔中に見たこともないできものができているストリートチルドレンの男の子。まるでそれは『巨大な人体実験』がおこなわれたかのような凄惨さだった。湾岸戦争後に増えているという癌や白血病や奇病について、イラクの医師は劣化ウラン弾の影響を上げた。しかし、米英軍は因果関係を否定している」。私も全く同意見です。

3月11日の大震災について。「3・11は、残された人々に『あなたにとって大切なものは何か』を無言で問うた。そうして私なりに出した答えが、好きな人たちと語らう時間、お酒を飲む時間、共感し合う時間、愛し合う時間(ちょっとエロいけど広い意味で・・・)こそが大切、というものだ。あなたはどんな答えを出しただろう。きっと私たちは、3月10日までの自分とは、どこか大きく変わっていると思うのだ」。強い共感を覚えます。

自分を好きでいるために。「(ここ数年間、仕事の量をセーブしているの)で、現在、それらの問題はそこそこクリアされている。時間に追われまくって殺伐とすることは大分減ったし、部屋もまぁキレイに保てている。そして時々誰も食べてくれないのに凝った料理を作り、一人、悦に入っている。基本的に地味な性格なので、そういうことが楽しい。そんな時、過労状態だった時の自分より、今の自分の方が好きだと思える。そうして思うのは、自分を好きだと思える瞬間を増やしていくことが、生きやすさにつながるのではないかということだ。・・・もうひとつ重要なのは、『この人といる時の自分が好き』という感覚だ。素直になれたり、自分を飾らなくてよかったり、刺激を受けて自分自身がどんどん成長できそうだったり。そんな相手といる時は、きっと生き生きしていて心から笑っている」。

恋愛依存の危うさについて。「私がもっとも生きづらかった20代の頃、恋愛は『自分への自信のなさを埋めるもの』という側面が強かった。・・・あの頃、私は『恋愛相手に認めてもらう』ことしか自分を保つ術を知らなかった。これは重い。そのうえ、『相手の自分に対する評価』によって『自分の価値』はジェットコースター並に急上昇と大暴落を繰り返す。本当はそんなものに振り回されたくないのに、他に『自分が認められる方法』を知らなかったのだ。思い出すだけで痛々しさのあまり嫌な汗が出てくるが、きっと多くの人の身に覚えがある経験だと思う」。

世界を整理するために。「今まで、何に一番お金を使ってきたか。そう問われると、『本』と即答できる。服でも酒でも旅でもない。・・・世界はあまりにも複雑怪奇で、だけど時々、たった1行の文章によって鮮やかに交通整理されたりする。今、私は、自分の中の『世界』を更新中なのである」。私も、本に最も金を使ってきました。

子どもの貧困について。「(小学5年生で施設に入った)彼女に『施設に来て一番嬉しかったことは何?』と職員が聞くと、彼女は『生まれて初めて靴下をはいたこと』と答えたという。靴下。それまでの人生で、彼女は一度も靴下をはいたことがなかったのだ。だからこそ施設に入った日、職員の人がカサカサの足の裏にクリームを塗ったうえ、そっと靴下をはかせてくれたことが嬉しくてたまらなかったという」。胸が締めつけられます。

生きづらさを感じている人だけでなく、そうでない人にもいろいろなヒントを与えてくれる一冊です。