榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

モーツァルトを聴くと頭がよくなる――は嘘だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(369)】

【amazon 『錯覚の科学』 カスタマーレビュー 2016年4月30日】 情熱的読書人間のないしょ話(369)

散策中に、かわいらしい兄妹の像と出会いました。コンクリートの継ぎ目でヴィオラが紫色の花をたくさん咲かせています。クレマチスにはいろいろな色や形の花がありますね。ヒラドツツジも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,109でした。

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閑話休題、『錯覚の科学』(クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ著、木村博江訳、文春文庫)を読んで、文字どおり目から鱗が落ちました。

注意の錯覚、記憶の錯覚、自信の錯覚、知識の錯覚、原因の錯覚、可能性の錯覚のそれぞれが、厳密な科学的実験によって証明されていく様は、快刀乱麻の趣があります。よほど迷信深い人も、これらの証明に正面切って反論することはできないでしょう。

●車を運転中に携帯電話を操作していても運転に支障はないという思い込みや、●普通の人は脳の潜在能力の10%しか使っていないという説、●サブリミナル効果は確かにあるという説――などが、次々に粉砕されていきます。

とりわけ私に強い印象を与えたのは、●モーツァルトの音楽を聴くと頭がよくなるという、いわゆるモーツァルト効果が嘘だと証明されていることです。

「モーツァルト効果に世間の関心が一気に高まったのは、1993年10月に、権威ある科学雑誌『ネイチャー』に、フランシス・ラウシャー、ゴードン・ショー、キャサリン・キイの研究報告が1ページにわたって掲載されたのがきっかけだった。標題は『音楽と空間認識能力』という、いたって穏やかなものだった。・・・彼(ショー)は音楽を聞くだけで脳の働きが活性化する――ただし、その音楽は適切なものにかぎる――という仮説を立てた。そしてモーツァルトが書いた曲は、『脳に内在する神経系言語ともっともよく響きあい』、脳をもっとも活性化させると考えた」。この仮説を実証するために行われた実験の化けの皮が剥がされていく過程は、実にスリリングです。人々がなぜモーツァルト効果を信じたのかの考察も興味深いものがあります。

●子供が、はしか、流行性耳下腺炎、風疹の三種混合ワクチン(MMR)の接種を受けると自閉症になる――という説も、数々の科学的実験で否定されています。この事例は、近年、問題化している子宮頸がんワクチンとその副反応とされているものとの関係を理解するヒントを与えてくれます。

●脳トレーニングをすれば、呆けが防げる――という説がいかにいい加減なものかも明らかにされています。数独が好きな女房にこのことを伝えたら、「私は呆け防止のためにやっているのではない。楽しいからやっているだけ」と切り返されてしまいました(笑)。著者は、脳トレーニングよりも有酸素運動のような肉体を使うエクササイズのほうが脳に遥かに効果があることを示した上で、高齢者に毎週3日に1回、45分間のウォーキングを推奨しています。

知的好奇心を掻き立てられる一冊です。