榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ウクライナ侵攻を仕掛けたウラジーミル・プーチンという男の思考回路とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2646)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年7月15日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2646)

ちっちゃなヒマワリが咲いています。

閑話休題、『ウクライナの未来 プーチンの運命――世界の賢人12人が見た』(クーリエ・ジャポン編、講談社+α新書)で、私がとりわけ注目したのは、ユヴァル・ノア・ハラリの「ロシアの侵略を許せば世界中の独裁者がプーチンを真似るだろう」、ニーアル・ファーガソンの「プーチンはウクライナ戦争で何を目論んでいるのか」、ウラジーミル・ソローキンの「プーチンはいかにして怪物となったのか」、キャサリン・メリデールの「プーチンが恐れているもの、それは自身の死と民主主義だ」、トマ・ピケティの「欧米諸国の考える『制裁措置』は『標的』を大きく見誤っている」、フランシス・フクヤマの「プーチンは完敗する――私が楽観論を唱える理由」、ジョージ・ソロスの「プーチンと習近平は第三次世界大戦の引き金になろうとしている」、ジョン・ボルトンの「中国とロシアの協調こそが世界の脅威になる」、ワシントン・ポストの「プーチンが『核のボタン』を押すなら、どこが標的となるのか」――の9つです。

●プーチンはウクライナ戦争で何を目論んでいるのか
「プーチンが仰ぎ見るのはスターリンのソ連ではない。プーチンが意識しているのは、ピョートル大帝時代の勃興期のロシアなのだ」。

●プーチンはいかにして怪物となったのか
「プーチンの内部の怪物は権力のピラミッドのみによって育てられていたわけではない。まるで皇帝が役人に対してするように、プーチンがときおり自分の食卓から腐敗という名の脂肪の塊を投げてやっていた、お金で意のままになるロシアのエリートだけがあの怪物を育てたわけではない。無責任な西側の政治家、冷笑的なビジネスマン、腐敗したジャーナリストや政治学者によっても、プーチンは肥え太らされたのである」。

●欧米諸国の考える「制裁措置」は「標的」を大きく見誤っている
「そろそろ新しいタイプの制裁を考案すべきときが来ている。問題になっている国家体制の恩恵を受けて裕福になったオリガルヒ(国有企業を民営化する過程で生まれたロシアの新興財閥)に対して制裁を集中的に科すべきなのだ。そのためにまず作るべきは、金融資産を登録する国際的な台帳だ。西側諸国の富豪たちは当然、嫌がるに違いない。それは彼らが、世間で言われているよりもはるかにロシアや中国のオリガルヒと利害をともにしているからだ」。「ロシアという国家に言うことを聞かせたいならば、喫緊に取り組むべきなのは、ロシアの体制を支えるマルチミリオネア(資産が数百万ユーロを超える富裕層)という薄い社会層に制裁を集中させることだ。この集団は、数十人よりははるかに大きいが、ロシア国民全体にくらべればはるかに小さい。・・・たとえば10~20%くらいの税率から徴収を始め、残った部分も凍結してしまう措置がとれる。この社会集団は、資産の喪失や西側諸国での滞在禁止処分をおそれてロシア政府に(戦争をやめるよう)働きかけるに違いない」。

●プーチンが「核のボタン」を押すなら、どこが標的となるのか
「アメリカのシンクタンク『アトランティック・カウンシル』の戦略・安全保障センター副所長のマシュー・クローニグは、プーチンが低出力の核兵器を配備するリスクが最も高いのは、ウクライナの抵抗が勢いを増して勝利に向かい始め、ロシアの敗北が決定的になった時だと指摘する。『プーチンが核兵器を使わずに軍事的完敗を受け入れるとは思えません。彼は、敗北を認めるよりも核の限定的使用のほうがマシだと考えるでしょう』。もしプーチンが核を使うとしたら、ほぼ間違いなく、標的を絞った低出力の兵器を配備するはずだと、クローニグは示唆する。これは他の専門家たちがみるロシアの軍事戦略『エスカレート抑止のためのエスカレート』に合致する。つまり、危機的状況を最高潮にまで盛り上げて、ロシアに有利な条件で西側に妥協を強いるという戦略だ」。

プーチンが仕掛けた身勝手なウクライナ侵攻の、一日も早い終結を祈るや切。