榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

障害は「欠落」ではなく、「違い」だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2871)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年2月25日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2871)

幸運にも、コミミズク(写真1~5)を撮影することができました。ノスリ(写真6、7)がホヴァリングしています。3羽のタシギ(写真8)がアシ(ヨシ)原にじっと潜んでいます。バン(写真9~11)、オオバン(写真12)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は13,202でした。

閑話休題、『異彩を、放て。――「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える』(松田文登・松田崇弥著、新潮社)は、知的障害者について、いろいろと考えさせられる一冊です。

「ヘラルボニーは、2018年設立、日本・岩手発の企業だ。知的障害のある作家のアートを、ハンカチや洋傘。クッションや食器など、ライフスタイルを彩るさまざまなプロダクトとしてプロデュースし、オンラインショップや各地のショップで展開している。そのほか、丸井やJR東日本、パナソニック、東京建物などさまざまな企業とコラボレーションを展開し、知的障害のある作家のアートをさまざまな形で世に届けている」。

「ヘラルボニーでは、『福祉』や『障害』という、普段多くの人がなかなか意識を持ちづらい分野を、さまざまな形で暮らしに溶け込ませ、福祉を起点に新たな文化やライフスタイルをつくりだすために、日々企業活動をしている」。

ヘラルボニーの社長・松田崇弥、副社長・松田文登は双子の兄弟で、彼らの4歳年上の兄・松田翔太は重度の知的障害を伴う自閉症と診断されています。「(兄は)周りから、『ふつうじゃない』『かわいそう』と見られ、蔑まれることもあった。なぜ、『ふつうじゃない』ことを馬鹿にされなければならないのか。僕らは、世の中に存在するそういった偏見や先入観を変えるため、ヘラルボニーという会社をはじめた。知的障害のある作家がつくる作品には、強烈な個性がある。生命の根源を感じさせるように細胞がうごめき、色彩豊かな葉っぱがリズムを刻む。繰り返される図形の連なり、何度も何度も描きつけた黒い丸・・・こうした模様は、知的障害のある人の多くが持つ、強いこだわりに由来している。つまり、『障害』が『絵筆』となって、見たこともない作品を生み出しているのだ。僕らは信じている。『ふつじゃない』ということ。それは同時に、可能性でもある、ということを」。

ヘラルボニーは、「障害は『欠落』ではなく、『違い』だ」と捉え、「資本主義の仕組みを適用して、作品をさまざまな形で商流に乗せることで、作家として正当な報酬を得られるようにする」システムを構築しています。さらに、「世の中には、社会の仕組みやハードをテクノロジーやアイデアでアップデートできる会社はいくつもある。けれども人の心を、価値観をアップデートできる会社は、ほとんどない。ヘラルボニーには、その力が確かにある」と自負しています。

本書のおかげで、知的障害者に対する見方が、大きく変わった私。