榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『森の生活』のソローを読み解くキーワードは、シンプリシティ、自然、読書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(372)】

【amazon 『世界を変えた森の思想家』 カスタマーレビュー 2016年5月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(372)

散策中に立ち寄った小さな温室で、強烈な色合いの植物たちを見ることができました。赤と黄のコントラストが鮮やかなインコアナナスの花苞が目を引きます。ネオレゲリアの葉は赤紫色、赤色、薄紫色など、さまざまなものがあります。アンスリウムは赤い仏炎苞から小さな白い花が密集した細長い棒状のものが突き出ています。ウケザキクンシランが橙色の花を咲かせています。因みに、本日の歩数は10,217でした。

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閑話休題、『世界を変えた森の思想家――心にひびくソローの名言と生き方』(上岡克己編著、研究社)によって、『森の生活――ウォールデン』(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー著、飯田実訳、岩波文庫、上・下巻)の著者として知られるヘンリー・デイヴィッド・ソローについて、いろいろなことを知ることができました。

ソローは自身の『日記』に、「私は、一日に少なくとも4時間――たいていはそれ以上――いっさいの俗事から完全に開放され、森を通り抜け、丘や野原を超えて散歩しないでいると、自分の健康や精神を保つことができないような気がする」、「森や野原を散歩することほど健康的なことはない。・・・ここではいろいろなものが僕を高めてくれるからだ」と記しています。毎日10,000歩以上歩くようにしている私も、全く同感です。

『森の生活』で、森の生活を始めた理由を明らかにしています。「私が森に行ったのは、悠然と生き、人生の根本的な事実にのみ直面し、できればその教えを学びたいためであり、いよいよ死ぬときになって、自分が生きてきた証しがほしかったからである。私は人生とはいえないようなものは望まなかった。生きるということはそんなにも大切なものだから。・・・私は深く生き、人生のすべての精髄を吸い出したかったのだった」。

読書については、こう述べています。「どれほど多くの人が、一冊の書物を読むことによって人生に新たな時代を築いたことであろうか」。一冊の本が人生を変えるというのです。

「ソローの森の生活は、自給自足と晴耕雨読をもとにした生活で、何事にも拘束されない自然のままに生きる、いたって自由気ままな生活である。畑を耕し、読書や執筆、散歩で一日は悠然と過ぎる。彼は『生活の余白を愛する』、『金銭ではなく、うららかな時間と夏の日々において豊かであった』と語る。曜日や時間に細分化され、時計の刻みでせきたてられる文明社会から逃避し、太陽や月、星、動植物の動きで一日を実感する。ソローは森に入るとき、時計と銃を捨てた。本質的なものとの遭遇を望む者にとって、文明の利器は極力控えねばならなかった。彼の森の生活を一言で要約すれば、『簡素な生活・高き想い』になろう」。

「ソローが『簡潔に、簡潔に、簡潔に!』と繰り返し叫ぶシンプリシティの哲学によれば、『人は物を持てば持つほどいっそう貧しくなる』、『人は無しにすませる物の数に比例して豊かである』と説く。豊かさの尺度は物の量ではないのである。むしろ必要以上の物は、物事の本質を見失わせてしまう。ソローは、『もし私たちが簡素に賢明に生きるならば、この地上で我が身を過ごすのは苦労ではなく楽しみである』とも語っている。シンプルライフの生き方は、現代文明の行き過ぎに対する倫理的規範となる」。

「ソローは自然に教えられることがたびたびあった。その一つに、大地に根をしっかりと下ろし、枝や葉を天に向かって無限に伸ばしてゆく樹木の生き方である。彼は自然に学び、自然の摂理に則って生きていくことが、自己を無限に成長させていく道であることを悟った」。

ソローのシンプリシティを重視する生き方、自然に学ぼうとする姿勢に大きな共感を覚えます。

マハトマ・ガンジーとマーティン・ルーサー・キングが、ソローの『森の生活』や『市民の反抗』を読んで大きな影響を受けたことにも言及されています。