榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

モームがバルザックとプルーストを高く評価しているので、嬉しくなってしまいました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1860)】

【amazon 『読書案内――世界文学』 カスタマーレビュー 2020年5月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(1860)

縄張りの池を高速で旋回飛行するオニヤンマを撮影しようと粘ったが、ことごとく失敗(涙)。私の隣で撮影中の石川健一氏(写真1)と和田英樹氏(写真2)のカメラには、ちゃんと写っているではありませんか。ヤマトシジミの雄、カワウをカメラに収めました。ソメイヨシノが実を付けています。落ちている実が、あっという間に、こんなに集まりました。クスノキの白い花が咲いています。葉を揉むと、爽やかな香りがします。因みに、本日の歩数は11,401でした。

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閑話休題、『読書案内――世界文学』(ウィリアム・サマセット・モーム著、西川正身訳、岩波新書)を31年ぶりに再読して、初めて読んだ時と今回では本書の印象が大分異なるのに驚きました。恐らく、当時は、まだ手にしたことのない名作が次から次へと登場するので、圧倒されてしまったのでしょう。

今回、とりわけ興味深いのは、ウィリアム・サマセット・モームが、「読書は楽しくあるのがほんとうだ」と言い、「とばしてよむことも読書法のひとつ」とアドヴァイスしていることです。

作家の評価については、オノレ・ド・バルザックとマルセル・プルーストに対する高い評価が印象に残りました。

「わたくしは、あらゆる点から考えて、バルザックは、あらゆる小説家のなかで、最大の小説家であると思う。・・・彼は同時代の社会史を書くことを志し、ある程度、それに成功した。バルザックをよむと、ある限られた一群の人びとではなく、個々の人びとの運命よりはさらに大きな問題が関係する、社会全体がとりあつかわれていることを感じる。わたくしは、彼は俗務の重要なことを、真に理解した最初の小説家であると思う。彼の作中人物は店をもち、あるいは実務につき、富をつくるかと思えば、それを失う。彼の作品では、愛が、すべての小説家のばあいと同様、大きな役割をつとめはするものの、彼が作り出した世界の原動力となっているのは金銭である。彼は、文章が下手で、極端に走りがちで、細かな趣を解さなかった反面、情熱と旺盛な精力をもち、それによって、病的で無軌道ではあるが、はげしいまでにいきいきとしたすばらしい人物を創造することができた。・・・バルザックの小説には、きわめて興味深いものがたくさんあるので、そのうちからただ一冊だけえらび出すのは困難であるが、わたくしには、彼がよむひとを感動させるその多種多様の能力を、遺憾なく発揮しているのは、『ゴリオ爺さん』であると思えるから、ここではこの作品をおよみになるようにおすすめしておく」。

「わたくしは、現代にマルセル・プルーストという過去の最大の小説家と肩を並べうる作家が出ていることを、注意しておかねばならない。・・・彼の書いた小説はわずかにひとつ、ただし、15巻からなる。・・・彼は偉大な独創的な作家であった。鋭敏な感覚、創造の才、人間心理にたいする洞察力をもっていた。だが、将来の人びとは、何よりも先に、おどろくべきユーモアの持主として、彼を迎えることだろうと、わたくしは考える。そこでわたくしは、このぼう大な小説をよむならば、まず最初からはじめ、退屈になったらとばしてよみ、しばらくしたら、また普通のよみ方にかえることをおすすめする。ただし、ヴェルデュラン夫人と、シャルリュ男爵のところは、一箇所でもよみおとすことがないように、注意なさるがよい。この二人の人物は、人間の喜劇的想像力が生んだもっともゆたかな創造物で、当代他にその類を見ない」。

バルザックとプルーストは、私の最も好きな作家であり、『ゴリオ爺さん』と『失われた時を求めて』は最も好きな作品なので、嬉しくなってしまいました。

巻末にモームの『世界の十大小説』が挙げられています。
●バルザック『ゴリオ爺さん』
●フィールディング『トム・ジョーンズ
●ディッケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』
●トルストイ『戦争と平和』
●メルヴィル『モービー・ディック(白鯨)』
●エミリー・ブロンテ『嵐ガ丘
●スタンダール『赤と黒』
●ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟
●フローベール『ボヴァリー夫人』
●オースティン『高慢と偏見
このうち、『デイヴィッド・コパフィールド』、『戦争と平和』、『モービー・ディック』は未読だが、私の人生の残り時間を考えると、読まずに終わることでしょう。